
50代以降も伸びる能力は「語彙力」だといいます(写真:saki/PIXTA)
年を取ると「脳の働きが、どんどん悪くなってきているように感じる」
ことが増えてきますが、脳科学者の西剛志氏によれば、
脳の老化は、高齢になってから起きるわけではなく、
若い頃から、すでに“老化現象”が始まっているそうです。
それでは、情報処理能力や集中力といったさまざまな「能力」のピークは
いったいいつなのでしょうか。
西氏の著書『増量版 80歳でも脳が老化しない人がやっていること』から、
一部を抜粋・編集して解説します。
■脳の「老化」に気付くのは難しい
70代の知人ケイコさん(仮名)から、こんなことを聞かれました。
「高校時代の同級生に10年ぶりに会ったんですが、
自分の話ばかりで、私の話をあまり聞いてない様子だったんです。
以前と変わってしまったんですが、何かあったんですかね?」
脳科学者としての意見が欲しいとのことだったので、こう答えました。
「それは、老人脳になっているのかもしれませんよ」
脳は通常、30代から、少しずつ萎縮が始まります。
そして60代半ばになるとMRI検査の画像を見て、
すぐわかるくらいの「明らかな萎縮」が起きています。
もしそのままなんの対策もせずにいると、脳の老化、つまり老人脳になっていくのです。
老人脳は、その人の行動や生活習慣、そして考え方にまで、
さまざまな変化を生じさせます。
たとえばこんなことです。
●新しいことをするのが、面倒になる
●物忘れが、多くなる
●集中力が、続かなくなる
●無配慮になる
●ミスが多くなる
●耳が聞こえにくくなる
ここに挙げたのは老人脳の症状のほんの一部です。
■脳の「ピーク」は、いったい何歳なのか?
また別の70代の知人は、こんなことを言っていました。
「もう歳なので最近、脳の働きが、どんどん悪くなってきているように感じる」
そう感じるのは事実だと思いますが、
脳の老化現象は、ずっと前から始まっています。
脳の老化は、高齢になってから起きるわけではないのです。
そこで、クイズです。
下記の能力のピーク年齢をあててください。
□の中に入るのは何歳でしょうか?
(1)情報処理能力のピーク □歳
(2)人の名前を覚える力のピーク □歳
(3)顔を覚える力のピーク □歳
(4)集中力のピーク □歳
(5)相手の気持ちを読む力のピーク □歳
(6)語彙力のピーク □歳
もちろん個人差があるので、皆が同じということではありませんが、
ハーバード大学はじめさまざまな研究機関で調査したデータでは、答えはこうなります。
(1)情報処理能力のピーク 18歳
(2)人の名前を覚える力のピーク 22歳
(3)顔を覚える力のピーク 32歳
(4)集中力のピーク 43歳
(5)相手の気持ちを読む力のピーク 48歳
(6)語彙力のピーク 67歳
この数字を見て、どんな印象を持ったでしょうか。
情報処理能力は18歳がピークで、以降はだんだん下がっていきます。
なので、情報処理能力を発揮するような仕事は、
脳科学的に見れば、若い人のほうが向いているということになります。
この数値を見て、「人の名前を覚えられないのは、年齢のせいだったのか」
と思ったかもしれません。
「名前を覚える」、「顔を覚える」は、脳の「短期記憶」に関わる部分です。
短期記憶には「言語の短期記憶」と「視覚の短期記憶」があります。
たとえば電話番号をその場で覚えることは「言語の短期記憶」です。
「若いときは電話番号を簡単に覚えられたのに、いまは覚えられない」
という人も多いと思います。
家族のスマホの番号を覚えている人は、意外に少ないかもしれません。
一方で、人の顔を覚える記憶は「視覚の短期記憶」です。
こちらは20代後半から32歳くらいまでは上がっていきますが、
それ以降は、だんだん落ちていきます。
大人数のアイドルグループのメンバーの顔が全く覚えられなくなった。
これは30代半ば以降の人にとっては、自然の流れです。
ちなみに、こうした歳とともに能力が衰えていく知能を「流動性知能」と呼びます。
■「50代以降」でも伸びていく能力がある
一方で、50代以降の人たちに朗報もあります。
50代以降も伸びる能力があるのです。それは「語彙力」です。
語彙力のピークは、なんと67歳。
昔は長老と呼ばれる人がいましたが、長老が周りの人から尊敬される存在だったのは、
歳をとっても言葉の力は、老いることがないからだと思います。
こうした言葉の力など、年齢とともに蓄積されていくものを「結晶性知能」と呼びます。
その中でも語彙力は、断トツで伸びていく能力です。
さらに面白いのが「相手の気持ちを読む力」です。
この能力は10代以下の人が低いんです。
そして20代になって急激に伸びていき、ピークは48歳です。
それ以降はグンと落ちていきます。50代、60代とどんどん下がっていきます。
この感覚、50代以降の人には、実感できるかもしれません。
10代は自我の確立をするために、意識の中心には自分がいる。
それが社会人になり、「相手」という存在を意識せざるを得ないシーンが
増えるのが20代の頃です。
その後いろいろな経験を積み、人の気持ちを考えるようになっていく。
まさに結晶性知能が高まっていきます。
ところが50代くらいからは、だんだんと周りのことを気にしなくなる人がいます。
別に悪気があってそうなるのではなく、
脳の能力が落ちていくことで、自然とそうなっていくのです。
■48歳を超えたら「相手の気持ち」を意識して
こうした傾向は、着るものにも影響します。
若いときは近所のコンビニに行くのにも、ちゃんとした外着で行っていたのが、
50代、60代になると着替えるのもだんだん面倒になり、
家着のままで外出したり、さらに進むと寝間着のままで行ってしまったり。
どんどん人目が気にならなくなっていくのです。
「相手の気持ちを読む力」がさらに衰えていくと、
いわゆる失礼な老人、キレる老人になっていくこともあります。
家族に横柄な態度をとったり、お店で店員さんに乱暴な言葉を使ったり、
自分の思い通りにならないことにキレたり・・・。
48歳を超えたら「相手の気持ちを考えること」に意識を向けていくと覚えておいてください。
ただ、「人の気持ちを読む力」の調査で、もうひとつわかったことがあります。
それは、人によって振れ幅が大きいということです。
たとえば40代でピークになる人もいれば、そのピークが70代、80代まで持続する人もいます。
この差は何か?
ピークを長く保てる人は、老人脳にならないために、
脳の老化をゆるやかにしたり(スローエイジング)、
積極的に若返らせる工夫(ダウンエイジング)をしているのです。
何もしないと自然に脳は老化しますが、うまく工夫すると、効果が出てきます。
脳を元気にすることは、人生を充実させるための大切な行為です。
西 剛志 :脳科学者(工学博士)、分子生物学者 ・・ 》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。
《・・「加齢=老化」とは言い切れない意外な“脳のピーク”・・》、
80歳の私は学び、多々教示させられたりした・・。
たとえば40代でピークになる人もいれば、そのピークが70代、80代まで持続する人も・・》、
私の人生を思い馳せと、70歳だった、と微苦笑したりした。
映画の脚本家になりたくて大学を中退し、アルバイトをしながら映画青年の真似事をした。
その後、養成所の講師の知人から、同じ創作をするのだったら小説を書きなさい、
とアドバイスを受けた後、契約社員などをしながら文学青年の真似事をし、
新人の純文学の小説コンクールの最終候補作の6作品の寸前で、3度ばかり落選したりしていた。
こうした落胆していた時、30代に普通の家庭が築けるの、妻子を養っていけるの、
と素朴な叱咤を叔父さんから、やんわりと言われ、
根拠のない自信にばかりの私はうろたえ、はかなくも挫折した。
そして何とか大手の民間会社に中途入社する為に、
あえて苦手な理数系のコンピュータの専門学校のソフトコースに、
一年通い、困苦することも多かったが、卒業した。
やがて1970年〈昭和45年〉の春、
この当時は大手の音響・映像のメーカーに何とか中途入社でき、
そして音楽事業本部のある部署に配属されたのは、満25歳であった。
まもなく音楽事業本部のあるひとつの大きなレーベルが、
外資の要請でレコード専門会社として独立し、
私はこの新設されたレコード会社に転籍させられたりした。
こうした中、制作に直接かかわらないコンピュータを活用した情報畑を20年近く配属されたり、
この後、経理畑、そして営業畑などで奮戦した。
この間、幾たびのリストラの中、何とか障害レースを乗り越えたりした。
こうした中で、1998年(平成10年)に音楽業界全体の売上げピークとなり、
この少し前の年から、各レコード会社はリストラ烈風となり、やがて私も出向となり、
各レコード会社が委託している音楽商品のCD、DVDなどを扱う物流会社に勤めたりした。
そして遠方地に5年半ばかり通勤し、何とか2004年(平成16年)の秋に出向先で、
定年を迎えることができたので、敗残者のような七転八起のサラリーマン航路を過ごした。