夢逢人かりそめ草紙          

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W.ワイラーの『ローマの休日』、なぜ日本では評価が高いのか・・!?

2010-02-10 00:09:03 | 映画・テレビ
私は遅ればせなから、W.ワイラーの『ローマの休日』の映画を観た、
と前記のこのサイトで【恥ずかしながら、初めてW.ワイラーの『ローマの休日』を視聴し・・。】と題して投稿した。

この中に於いて、
【・・
日本の映画好きな著名人の歴代洋画作品に於いて、
ベストテンの上位に『ローマの休日』が選定されることが多く、
私はおとぎ話のような作品が選ばれるのは、程度の低い人たちと思っていたのである。
・・】
このように私は広言したが、私は映画をテレビで観終わった後、考え込んだのである。


この映画が日本で公開されたのは1954(昭和29)年であり、
この当時の日本の多くの人は、娯楽はテレビはもとよりなく、ラジオ、映画などが主役であった。
大手の新聞の映画の広告欄は現代より多く、上映されている作品が映画館別の一覧表も常設され、
映画の作品批評、紹介欄もあったのである。

映画専門の評論家、そして新聞社の芸能全般の記者も折、
各映画会社は試写会などでこのような専門家を招き、少しでも良い批評、紹介を書いて頂くのもひとつの宣伝の業務であった、
と感じたりしている。

そして、この『ローマの休日』の場合は、もとよりある王女と新聞記者のコメディ・ラブロマスであり、
特に新聞社の記者たちは何らかの親近感があったろうし、
この映画を観た結果、記者になりたて新聞社に入社を志望された方もいる、
と私は何かの雑誌で読んだ記憶がある。

このような上映公開前の好評も得た上、日本の興行も大成功であった。
この年の興行の外国映画の上位には、
①『ローマの休日』     配給 2億8404万円
②『砂漠は生きている』  配給 2億2107万円
③『グレン・ミラー物語』  配給 1億8202万円
であった。
②の『砂漠は生きている』は、私は小学生で学校として3年生以上ほぼ全員が映画館に行って観たので、
個人の動員数の視点から、『ローマの休日』は突出した首位とでいえよう。

もとより上映されてから、オードリー・ヘップバーンの魅力とローマの情景に話題を重ねた結果が主因と想像する。

その後のオードリー・ヘップバーンも映画主演のたびに、
これまでのアメリカ女優にないファニー・フェイスとして、確固たる存在感を示した上、
衣服などを含めたトータル・ファションまで数多くの人たちに魅了させ、影響をもたらした稀な女優となった。


そして幾10数年過ぎた時、歴代の洋画作品を選定する時、
それぞれの観客者はオードリーの原点である鮮烈な『ローマの休日』に思い浮かべ、
自身の過ぎ去った軌跡に思いを重ねて、この作品を選ばれたのだろう。


このようなことを私は深夜に深く思ったりしたのである。

そして、偶然であるが、猪木武徳・著の『戦後世界経済史 ~自由と平等の視点から~』(中公新書) を読んでいた時、
この『ローマの休日』の作品の製作資金などのことを教示されたのである。

戦後、アメリカは疲弊した西ヨーロッパの諸国を救済するひとつとしてマーシャル・プランは多くの方に知られた通りであるが、
《・・
マーシャル・プランはこの他にも、「技術援助プログラム」としてヨーロッパの技師や経営者を米国に招き、
米国の産業事情を直接観察してもらうというプロジェクトを実施した。

また、米国の映画産業に関しても興味深いエピソードがある。
マーシャル・プラン以前は、米国政府の政治的な力で、
経済的な援助の代わりに(フランスの映画産業には迷惑なことだが)アメリカ映画を上映するというよう政策を採っていた。

しかし、マーシャル・プラン以降50年代に入ると、
米国の映画産業は国内ではテレビの普及に押されて、次第に興行成績が低下し始める。

テレビに対抗するために大型スクリーンが導入され、独立プロの時代に入った。
独立プロの映画製作資金は、メジャー各社が海外に持つ「凍結ドル」であった。

これはマーシャル・プランによって米国では使えないドルである。
名画『ローマの休日』はパラマントがこの「凍結ドル」を利用して作った映画なのである。
オープニングの字幕に、
「この映画はすべてイタリア・ローマで撮影され、録音された」
と大きく出てくるのはそのことを示すためである。
・・》
引用:68ページ
注)原文にあえて改行をした。

このような製作資金の秘話があるが、こうした制約の基で、
W.ワイラーは製作と監督の立場で、名作『ローマの休日』を完成させ、
多くの功績を残したことには、作品の優劣に関わらず、私は思わず脱帽したのである。




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