私は東京の調布市に住む年金生活のまもなく74歳の身であるが、
私たち夫婦は子供に恵まれなかったので、我が家は家内とたった2人だけの家庭である。
そして雑木の多い小庭の中で、古ぼけた一軒屋に住み、ささやかに日常を過ごしている。
こうした中、私たち夫婦はお互いに厚生年金、そしてわずかながらの企業年金を頂だいた上、
程ほどの貯金を取り崩して、ささやかな年金生活を過ごして、早や14年目となっている。
私は民間会社の中小業のある会社に35年近く勤めて、2004年(平成16年)の秋に定年退職し、
この間、幾たびのリストラの中、何とか障害レースを乗り越えたりしたが、
最後の5年半はリストラ烈風が加速され、あえなく出向となった。
こうした中で遠い勤務地に勤め、この期間も私なりに奮闘した結果、
身も心も疲れ果てて、疲労困憊となり、定年後はやむなく年金生活を始めたひとりである。
そして年金生活は、サラリーマン航路は、何かと悪戦苦闘が多かった為か、
つたない半生を歩んだ私でも、予測した以上に安楽な生活を享受して、早や14年目となっている。
過ぎし2011年(平成23年)の7月下旬のある日、
いつものように午前中のひとときに、平素の我が家の買い物専任者の私は、
駅前のスーパーに向かい買物に行った。
この後、本屋に立ち寄った時、過日の読売新聞の出版広告で、
たまたま中央公論新社の新書本の案内のひとつで、
西垣千春・著作の『老後の生活破綻 ~身近に潜むリスクと解決策~』を知り、
いずれは読んでおきたいと感じたりしたことを思いだして、本書を手に取ったりした。
そして解説文を読んだりした・・。
《・・認知症、病気、詐欺、事故、子どもの失業――
老後の生活にはさまざまなリスクが潜んでいる。
そして一度問題が生じると、周囲に気づかれないまま生活が破綻してしまうことも、
現代の日本社会では少なくない。
高齢者を助けるサービスはたくさんあるのに、なぜ十分に活用されないのか。
苦しむ高齢者を一人でも減らすため、
また、自分や家族がそうした事態に陥らないために、何が必要なのか。
豊富な実例とともに考える。・・》
このように明記された文を読み、買い求めたりした。
やがて私は帰宅後、この本を読み始めた・・。
本書の中では、第1章には『高齢社会の現実』に於いては、
《高齢化の特徴》、《健康》、《血縁と地縁》、《家計》が、丁重に解説されていた。
第2章には『事例で見る生活破綻』に於いては、
実例のパターン別に、《判断力の低下》、《健康状態の変化》、《近親者による経済的搾取》、
《子どもが親に経済的依存》、《予期せぬ事故・災害》、《詐欺による被害》を具体的に記載されていた。
そして第3章には『高齢者特有のリスク』に於いては、
《生活破綻の実態》、《セルフマネジメント能力の低下》、《人間関係の変化》、
《困窮にどう気づくか》の難題も明確に記載されていた。
或いは第4章には『サービス利用の有無を分けるもの』に於いては、
《こんなにある有用なサービス》など4大項目が解説されていた。
そして最終の第5章には『高齢者の生活破綻を防ぐために』に於いては、
《守らなければならないもの》など3大項目が提示しながら、解説されていた。
やがて夜にかけて読み終えた後は、
長い老後を安らかに生きる為の教科書のひとつだ、と心の中で呟(つぶや)いたりした。
そして本書は、齢を重ねた高齢者にとっては、
誰しもが避けて通れない切実な難題が数多く明記されているので、
これ以来、私は貴重な教科書として、思い深めている。