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ウィトラのつぶやき

コンサルタントのウィトラが日頃感じたことを書いていきます

モバイルオペレータの強みは決済ではないか

2015-05-19 09:13:58 | 経済

今日の日経新聞にソフトバンクがネットで買い物をした時の決裁を携帯電話料金の支払いの仕組みでできるように決済ビジネスに乗り出すとある。

私は以前からモバイルオペレータの強みは決済にあると思っていた。数千万人の顧客から毎月料金を徴収している行為は他の業界にないものであり、口座数や顧客数で銀行や電力会社などを上回る。本人確認もできており、支払履歴から与信情報もあるはずで、オペレータの持つ強い経営資源だと思っている。

2008年にKDDIと東京三菱銀行が共同でじぶん銀行を設立したときには、この方向に走り出す有力なツールだと思ったのだが、じぶん銀行は鳴かず飛ばずである。この場合はAUの契約とは別にじぶん銀行の口座を作る必要があり、その手続きが結構面倒なので加入者が増えないのだと思っている。じぶん銀行の口座数が増えないのは私は親会社の意欲が不足しているのだと思っている。AUウォレットなどを導入するくらいならじぶん銀行の講座に誘導したほうがはるかに良いと思うのだが、そうした手も打っていない。

今回のソフトバンクの発表は決済機能に乗り出し、ソフトバンクユーザなら誰でも利用することができる。こうしたサービスで利便性を高めていって、認知度が高まってから銀行業に乗り出す、というのがより良い方針なのかもしれない。今後の様子を見守るしかないが、ソフトバンクが成功したら慌ててじぶん銀行も強化するが、既に何年もの停滞期を経ていることがじぶん銀行にとってはかえってマイナスになるのではないかという気がしている。

モバイルオペレータはこぞってコンテンツビジネスを強化しているが、コンテンツ事業者との競合よりも金融業界との競合のほうが戦いやすいのではないかと私は思っている。その根拠はりそな銀行を再建した細谷英二氏(故人)の「銀行の常識は世間の非常識」という言葉である。



中国経済の不思議

2015-05-01 21:30:00 | 経済

中国経済が減速していると頻繁に言われるようになり、政府も利下げをして対応したりしている。中国経済はバブルなのか、危ないのではないか、という声も聞かれるようになってきた。しかし、その一方で株は上がっており、上海株の今年に入ってからの上昇率は、日経平均、ダウ平均など世界の主要市場で最も高い。本当のところはどうなっているのだろう。

そう思っていたら、英国Economist誌で中国経済の分析記事が出た。テーマは減速するのは間違いないとしてハードランディングになるかソフトランディングになるかという点である。不動産、特に地方政府の無理な開発は相当大きく厳しい状況にあることは事実だが、ソフトランディングできるだろう、というのが同誌の結論である。その根拠は、借入金が中国国内で回っていて国外からの借り入れはあまりないというのが主な理由だったと思う。だがそれなら90年ころの日本もそうだったのではないか? Economist誌は他にもいろいろな要因を挙げていたが、「これだ」と感じるような点は私にはつかめなかった。

しかし、結論としては私もEconomist誌に賛成である。私の主な理由は中国がまだ先進国になり切っていないという点にある。恐らく不動産の失敗で破産する人や自殺する人など悲惨な目に合う人はたくさん出るだろう。日本ならば大騒ぎになって社会問題になるのだろうが、中国では社会全体を揺さぶるようなことにはならないのではないかと思っている。一つは政府が一党独裁で、マスコミも政府が牛耳っている点にある。従って、一部の人が不幸になってもその波及を抑えることは比較的容易である。更に、中国国民が浮き沈みがあって理不尽や不幸になることに対する耐性があると思うのである。つまり社会あるいは生活レベルに対する期待度が低いという点があると思う。

従って、日本の失われた20年のように悪い状態が長く続く可能性は低いし、政府も一部の人が不幸になっても大胆な手を打つというやり方が出来そうに思うのである。日本国民なら耐えられないような状態にも中国国民は耐えられそうだという点が、私の思う中国経済の最大の強みである。



ソフトバンクとIBMの連携

2015-04-22 09:29:51 | 経済

今朝の日経に「スマホ、AIと連携 ソフトバンクモバイル」という記事が出ていた。ソフトバンクは目の付け所が他のオペレータと違う感じがする。ソフトバンクが出血サービスで人型ロボット「ペッパー」を発売しているのは人工知能(AI)の将来を見越して学習能力をクラウドで高めることを狙っているといわれている。私は「ソフトバンクにそんなスキルがあるのか」と思っていたが今朝の発表で理解できた。IBMの人工知能「ワトソン」と組んでサービスを提供するという狙いである。IBMからすればビッグデータにつながる情報が手に入るし、ソフトバンクからすればブランドイメージがつく。老人ホームなどの顧客を囲い込みやすくなるだろう。良い経営判断だと思う。

良く「大きなトレンドは読むことができるが、近場の予測は外れる」と言われる。大きなトレンドとは

・インターネットの利用はますます広がる
・事業はグローバル化する
・ロボットは将来広く使われるようになる
・ビッグデータを使ったクラウドサービスは普及する

などである。これに対して近場の話とは

・腕時計型端末はどうすれば売れるか
・センサネットワークではどの技術が本命になるか
・太陽光発電に対する補助金政策はどうなるか

などである。大部分の企業はこれらの近場の将来を読もうとして必死になり、ある時は賭けに出る。これをリスクを取るとこだと考えているように見える。これは多くの失敗の上に一部の運の良い、或は優れた着眼を持つ企業だけが成功する。ソフトバンクも近場の読みもやっているが、むしろそれに対する投資は抑制的に見える。他のオペレータと違って大きなトレンドを読んで手を打つ動きもかなり感じられる。トレンドは読むが、具体的な動きは徹底的に利益志向で動く。自社開発にこだわったりせずに世界の一番強いものと組もうとする。成功したときの自分の取り分をどこにするかは考えてある。利益志向が強いので評判は良くないが、こういうのが経営力だという感じがする。



ノキアがアルカテル・ルーセントを買収?

2015-04-15 09:18:27 | 経済

今朝、通信インフラ企業に関する大きなニュースが入ってきた。フィンランドのノキアがフランスのアルカテル・ルーセントを買収する、という情報である。日本語のニュースでは「買収交渉に入った」という感じだが、今朝のBSのフランスのテレビ局の報道ではほとんど決まりの感じである。政府が売却したがっていて、経済界が反対しているという状況のようである。実現すれば大変なビッグニュースである。

考えてみればノキアがドイツのシーメンスを買収し、フランスのアルカテルがアメリカのルーセントを買収した時点で大きな驚きだった。しかし、2社とも業績を思うように伸ばせず、大規模買収は行わずに自力で市場拡大してきたスウェーデンのエリクソンと中国の華為が業績を伸ばしてきた。今回の買収でアメリカ・ドイツ・フランスの政府系通信インフラ企業がまとめてフィンランドのノキア傘下に入るということになる。それでもエリクソンに勝てるかどうかという状況である。通信インフラは国家機密が情報として流れるのでアメリカ政府はかなり保守的な動き方をしている。アルカテル・ルーセントはそのおかげでこれまで食いつないできた感じだが、政治力に頼ると新生ノキアも危ないと思う。

これに対して日本企業はどうか、日本ではまだNEC、富士通、日立の3社が事業をしている。日立は撤退に近いイメージでNECと富士通の2社に近いと言えるかもしれない。それにしても日本国内の小さなマーケットを争っていて、世界のダイナミックさと比べると及ぶべくもない。もはや買ってくれると企業も見つからず、そのうちひっそりと幕を引くことになるのだろうと思っている。私が実際にかかわった事業分野であるだけに何とも寂しいことである。

なぜこんなことになってしまったのか? いろいろな理由があるが世界標準が確立されてきた点が大きいと思う。通信インフラ機器は一般人の目に触れない装置でデザインは関係なく、コストパフォーマンスを決める技術力と営業力で決まると思っている。元々は日本企業もそれなりの技術力を持っていたはずだが、世界市場に出遅れ、世界市場は上記のようなグローバル企業で占められていくにつれて売り上げ規模の小さい日本企業は開発投資も小ぶりになり、次第に技術力の差が拡大してきたのだと思っている。事業を売却するといった経営判断もできなかった。標準化で世界市場が拡大したときの一つの典型的な負けパタンだと思っている。

今、その余波がIoTというインターネット活用技術によってはるかに幅広い産業界に及ぼうとしている。日本企業もIoTをどう取り込むかを勉強しているようだが、本質的問題は技術としてのIoTよりも、IoTによってグローバル化する将来の業界に合わせてビジネスモデルを変更していけるかどうかという点にあると思っている。


コマツとGEの提携、ネット時代の新潮流

2015-04-08 08:22:45 | 経済

今朝の日経1面トップにコマツとGEがIoT(Internet of Things)で提携する、というニュースが流れている。これは将来産業界全体に影響を与える大きなトレンドの具体例だと思っている。

日経では先行するGEにコマツが乗ったような書き方をしているが、私はむしろ逆で、GEがコマツのビジネスモデルを真似て新機軸を打ち出したのだと思っている。コマツはKOMTRACKSという建機の稼働データをインターネットで収集し、解析して、運用やメンテサービスにつなげるネットワークを独自に通信オペレータと契約して構築し、他社を差別化して業績を伸ばしてきた。GEはこのコマツのビジネスモデルを真似て、発電所や航空機エンジンをモニタリングするサービスをIndustrial Internetとして大々的に打ち出し、有名になっている点がGEが先行したという印象を与えているのだろう。

コマツのシステムは自社利用で顧客サービスにつなげるという閉じたシステムであるのに対して、GEはインターフェイスを標準化してコアとなるソフトウェアも開示して他社を巻き込んだ流れとした点が大きく異なっている。今回の動きもコマツとGEでビッグデータを共有するとしている。GEは将来の利益の源泉は仕組みづくりよりもデータ量にあると見切っているのだろうと思うし、これは正しい認識だろうと思う。

このコマツとGEの動きの違いに日米の企業の違いを感じる。コマツはこれまでKOMTRACKSを活用することで業績を伸ばしてきたが昨今のIoTブームで競合他社でも容易に同様のサービスを提供できるようになることが見えてきて、次の一手を模索していたものだろう。しかしコマツにはGEのように大胆な発展に向けた方策は思い浮かばなかった。それは技術の核となる部分がソフトウェアにあり、コマツのソフトウェア技術は他社に勝てるようなレベルではないからだと思っている。GEのソフトウェアも同様に強くはなかったが、GEは投資をしてソフトウェア技術者をかき集め、ソフトウェア技術を短期間で強化してきた。これができるのは人材の流動性の高いアメリカだから、と言えると思う。GEのソフトウェアが本物かどうかはまだわからないが、少なくとも立ち上げに成功したことは間違いない。一方のコマツは日本企業としては先進的な動きで一定のシェアを確保できるが、次第にGEのソフトを利用する場面が多くなってくると思っている。

私が関わってきた日本の通信業界がこういった動きで存在感を示せなかったのは残念である。構想力のある人物がいればもっといろいろな動きができたと思っているが、日本の通信業界はIoTではなくM2Mに注力してきたのが間違いだった、という印象を持っている。M2MはMachine-to-Machine Communicationのことでモバイル通信でグローバル化してきたヨーロッパのオペレータの発想である。内容はIoTとよく似ているが言葉が示す通り、M2Mは通信オペレータが通信料金を稼ぐための手段、という色彩が強く、ユーザ視点が弱いために広まらなかった。IoTでユーザ企業の利益を考える、という方向に動いていればもっと存在感を出せただろうに、と思う。

この動きは産業界全体に広がっていき、日本企業は全体として地盤沈下を起こすのではないかと危惧している。特効薬は私には思いつかず、当面は強みの残る部品事業などに特化して生き残り、ソフトウェア開発力を学校教育から見直して強化していくような政策が将来の日本のために必要ではないかと思っている。



パテントトロール対策を考える

2015-04-07 09:49:47 | 経済

科学技術の進歩を特許と言う形で公開し、公開した人に独占的使用権を与える特許制度は技術進歩に多大な貢献をしてきた。アメリカは1980年代の日本からの輸出攻勢に対抗するために技術イノベーションを重視する「プロパテント政策」を取った。最近はそれが行き過ぎて歪を生じていると感じている。

パテントトロールとは自らは研究開発を行わず、どこか他の会社から特許を買って、別の会社に特許料を請求する主に法律家の集団である。メーカー間の特許交渉はお互いに相手の特許を使わせるクロスライセンスになり、弱いほうが使用料を払うという形になるのだが、トロールの場合には自分は何も製造しないので特許交渉では圧倒的に有利になる。トロールと言うのは「化け物」を意味しておりイメージが悪いと訴訟を起こされたりするので最近はNPE(Non-Practicing Entity)と呼んでいる。

最近は特許の売買や企業の買収が増えてきてこのNPE問題が急増してきている。メーカーが特許を積極的にNPEに売るような例も出てきた。標準必須特許などでこれをやられると業界全体の発展の妨げになる。特許は本来それを使って事業をする人が保有すべきはずの物なのに、この流れは特許本来の趣旨に逆行していると思う。アメリカ政府も対応策の検討に入っているらしい。

現在、特許料の算定は、特許を利用した製品の何%と言う形で算出され、その値は特許の製品に対する貢献度で決まるのが普通である。これに対して私の考えでは、裁判所が特許料を裁定する時に特許権者の遺失利益、つまり本来特許を自分が自分が独占していたら得られたはずの利益、を考慮すべきである。遺失利益と利用者が得た利益のバランスで判断するというのはどうだろう。こうするとNPEはわずかしか特許料を取れないことになる。街の発明家などもビジネスできないことになる。

私はそれでも良いのではないかと考えている。特許が価値を持つのは実際にそれを使って利用する人にとってなので、街の発明家がスマートフォンに関する発明をした時には、Appleから特許料をせしめようとして行動するよりもAppleに特許を売ることを考えるほうが自然だと思うのである。ネット上でそのような特許を売買するビジネスができても良いと思う。

企業は社員の発明を買い上げる方向に世の中は動いている。その場合の報奨金制度なども整備されてきているが、他の企業から特許を得る場合もこれと同じ枠組みで考えることができるのではないだろうか。つまり、買い上げた後でも、このような発明者に対する報奨金はあって良いと思う。しかし、訴訟を起こして儲けようとする法律家に有利な法律にしておく必要はないと思っている。



中国主導のアジアインフラ投資銀行への世界の態度

2015-03-30 08:29:55 | 経済

中国主導のアジアインフラ投資銀行に対する世界各国の態度が割れていて、その裏にある本音が透けて見えるように感じている。最初、中国は東南アジアやインドを巻き込んでインフラ投資銀行を立ち上げようとしていた。しかし、世界規模にしたいと考え世界各国に参加を呼び掛けていた。最初は先進各国は様子を見ていた。中国主導の姿勢が明確でメリットがあるかどうかが分かりにくかったからである。

潮目が変わったのはイギリスが参加表明してからである。ドイツ、フランス、イタリアが参加表明をしてにわかに世界システムの様相を示してきた。韓国は迷った挙句に参加を表明した。日本も迷い始めており、参加したほうが良いという意見が強くなってきた。期限は3月いっぱいである。アメリカは最初に参加を表明したイギリスに対して不快感を示している。

仕組みでは世界銀行などに比べて透明性が低く、中国の優位性が明確らしいが、それだけ参加各国に対する負担は軽いものなのだろうと思う。それでイギリスの実利主義が、「透明性」といった正義感を上回ったのだと思う。参加しなければ情報は入ってこない。参加しておけばビジネスチャンスがあるかもしれない。運営が偏っていれば脱退すれば良い、あたりがイギリスの考えだと思う。

問題なのは韓国と日本である。アメリカとの軍事同盟の色彩が強く、アメリカの意向に反する行動は取りにくい。その一方で中国と地理的に近く、摩擦もあるが経済的結びつきは強い。韓国は迷った末参加を決めたが、日本はまだ判断できないでいる。この辺りに「アメリカからの独立」の程度に日本と韓国の差を感じる。

私はイギリス参加のニュースを聞いた時に「やるな」と感じた。無視することも可能だが、調査の結果無視できない大きな流れになると判断したのだろう。義務が大きくないのであればアメリカとの摩擦があっても参加したほうが得だと判断したのはイギリスらしい感じがする。ヨーロッパ主要国が参加したのも同じ理由だろう。日本も参加したほうが良いと私は感じている。

中国にとっては、アメリカに対抗できるだけに力を世界が認めている証であり、望ましいことだろう。その一方でうるさいのがたくさん入ってきたので好き勝手はできない状況になりそうで、進め方を内部で議論している最中だろう。アメリカ主導の体制で起こっていた中国側から見て理不尽と思われた意思決定は少なくとも覆すことができる。その一方で自国の利益だけを考えた行動は取りにくくなっている。最も歓迎しているのはインドや東南アジアなどの諸国だと思う。

始まってみないとどうなるかは分からないが、少なくとも中国は世界に金融システムを提案できるだけの大国になった。実際に提案を行った点が「Japan as No1」と言われた80年代の日本との違いだと思う。



中国経済の減速

2015-03-18 10:35:19 | 経済

中国で全国人民代表者会議が行われ、中国政府は成長目標を7.0%に下げた、と盛んに報じられている。しかし、7.0%自体はかなり前から言われていたことであり驚くことではない。実際に7.0%の成長ができるかどうかが問題だと思う。中国の貿易統計によると1月は輸出、輸入ともに減少、2月は輸出が大幅増加、輸入が大幅減少となっている(いずれも前年比)。中国では春節前に経理を整理するので、企業が調整する傾向があるとしているが、1-2月をまとめてみると輸出が15%増、輸入が20%減だという。輸出増加は良いしるしだが、輸入減少は内需の弱さを示している。輸出増がそれほど続くとは思われず、7%成長もかなり苦しいのではないかと思っている。中国政府は元安に誘導するかもしれないが、これは世界との摩擦を生むだろう。

私は毎年1月に今年の経済予測などが出るのを色々と読んでいるのだが、大方の経済評論家は、中国の今年の成長の7.0%は実現できるだろうという見方だった。しかし、今は7.0%は苦しいという見方が増えてきているように思う。それでも6%以上の成長ができるなら大きな問題にはならないと思うが6%を切るようだと、最近のロシアのようなおかしな行動に出るリスクがあると思う。

一方日本はどうかというと、2月の貿易赤字が半減したというニュースが出ている(前年比)。原油安の割にはたいしたことは無いなと思って調べてみると、輸出2.4%増、輸入3.6%減という数字である。日経新聞は円安で輸出が増加に転じたと書いているが、下げ止まったという程度ではないかと思う。為替が1年前は$1が105円だったのに今は120円になっていることを考えると、ドル建ての輸出だったら10%以上増えているはずの輸出が2.4%しか増えていないということはまだ輸出が増えたとは言い難い状況ではないかと感じる。一方、輸入物価が上がっているのに金額は減っている。貿易収支の改善は、まだ原油安に頼っているということだろう。もっとも2月は中国向け輸出がさえなかったという事情はあるらしい。

経常収支は着実に黒字化している。日本企業の海外進出が進んでいることを示すものだろう。このまま日本企業がグローバル化して成功していくなら、見通しは明るいと思う。ただし、日本企業も外国人の雇用が増える傾向にあり、企業業績は良くなっても雇用は弱い。つまり格差は広がる、という傾向は続きそうに思う。それでも企業業績が悪いよりははるかに良いと思う。



Big Mac Indexと物価

2015-02-05 17:15:32 | 経済

最新のBig Mac Indexが発表された。これはBig Macが世界中で売られており、材料もほぼ同じモノを使っているので物価の基準として使えるのではないか、と言う話しである。Big Macが為替レートで換算して安い国は為替が過小評価されており、為替が上がる可能性があると言うことである。

Big Mac Indexによると基準となるアメリカの価格が$4.79、物価が一番高いのはスイスで$7.54、イギリス、フランスなどのヨーロッパの先進国は$4.3あたりで、日本は$3.14、インドは$1.89である。この換算で行くと、$1=¥77が適正為替と言うことになる。どうも実感と合わない。

そこで、OECDのPPP(Purchasing Power Parity)基準を調べてみると$1=¥104あたりが適正為替と出ている。PPPはGDPの為替補正に使われる基準でこちらのほうが実感と合う。Big Macは日本ではかなり安く売られているのだと思う。量が少ないのではないかと私は思っている。

ちなみにインドルピーで言うと実勢レート$1=61.5ルピー、Big Mac Indexでは$1=24.6ルピー、PPP補正では$1=17.7ルピーである。インドではBig Mac Indexのほうがルピー安に出ている。日本ではBig Macは安く、インドでは高いということだろう。インドではマクドナルドブランドはイメージが高く、日本では低いということだろうか。

マクドナルドはブランドイメージが落ちているので価格基準としては適さなくなってきているのではないだろうか。ちなみにPPP基準による2013年の世界GDPでは1位アメリカ$16.7兆、2位中国$16.1兆、3位インド$6.8兆、4位日本$4.6兆、5位ドイツ$3.5兆である。2014年の結果はまだ出ていないが中国がアメリカを抜いたことは間違いないだろう。為替は投機的に動く面もあるのでPPP基準によるGDPのほうが実態に近いのではないかと思っている。



将来は個別生産に戻る?

2015-01-30 06:59:42 | 経済

昔、例えば明治時代に日本人が洋服を着るようになったころは、仕立屋という職業があって、一人ひとり採寸して洋服を作っていた。世界的にもこの時代は個別に作っていただろうと思う。それがイージーオーダーというちょっとだけ仕立てる作り方になり、現在はほぼ「既製服」を選んで買うようになった。「既製服」は今では死語になっているが、私が子供の頃にはまだ使われていた。つまり新しい概念だったということである。結果として仕立屋という職業はなくなった。

最近の流れを見ているとその流れが逆流するように感じている。つまりまた仕立ての服のほうに戻っていき、仕立屋という職業が復活する方向に向かっていると感じている。それは昔と同じやり方では無く、情報通信技術を使って、個別設計、個別生産が容易になりコストが大幅に下がると思うからである。IoTや3次元プリンタのような技術が世の中をこの方向に向かわせる。特に消費者向けの嗜好品ではこういった傾向が強まっていくと思う。

効率を重視する企業向け製品や、消耗品などでは大量生産が続くだろう。生産設備などはこれまで単品生産で製造物は大量生産だったのがこれからは生産設備が規格品で量産になり、実際に生産される製造物はソフトウェアで個別に制御された個別品になる、というような逆転現象が起こるかもしれないと思っている。今ドイツで始まっているIndustry 4.0と言う流れはこの方向に向かうものだと思う。

そうなると将来の仕立屋は、衣服のセンスと同時に、情報通信を使いこなす技術が不可欠になる。現状、この二つはかけ離れたスキルだと思われており、両方を教える教育などは少ないと思うが、先進的なデザイナーなどは実際に両方を使う必要が高まっていると思う。今は特殊学校で教えるような内容なのかもしれないが、教育のやり方を見直していく必要があるのではないかと感じている。