今日の日経新聞にソフトバンクがネットで買い物をした時の決裁を携帯電話料金の支払いの仕組みでできるように決済ビジネスに乗り出すとある。
私は以前からモバイルオペレータの強みは決済にあると思っていた。数千万人の顧客から毎月料金を徴収している行為は他の業界にないものであり、口座数や顧客数で銀行や電力会社などを上回る。本人確認もできており、支払履歴から与信情報もあるはずで、オペレータの持つ強い経営資源だと思っている。
2008年にKDDIと東京三菱銀行が共同でじぶん銀行を設立したときには、この方向に走り出す有力なツールだと思ったのだが、じぶん銀行は鳴かず飛ばずである。この場合はAUの契約とは別にじぶん銀行の口座を作る必要があり、その手続きが結構面倒なので加入者が増えないのだと思っている。じぶん銀行の口座数が増えないのは私は親会社の意欲が不足しているのだと思っている。AUウォレットなどを導入するくらいならじぶん銀行の講座に誘導したほうがはるかに良いと思うのだが、そうした手も打っていない。
今回のソフトバンクの発表は決済機能に乗り出し、ソフトバンクユーザなら誰でも利用することができる。こうしたサービスで利便性を高めていって、認知度が高まってから銀行業に乗り出す、というのがより良い方針なのかもしれない。今後の様子を見守るしかないが、ソフトバンクが成功したら慌ててじぶん銀行も強化するが、既に何年もの停滞期を経ていることがじぶん銀行にとってはかえってマイナスになるのではないかという気がしている。
モバイルオペレータはこぞってコンテンツビジネスを強化しているが、コンテンツ事業者との競合よりも金融業界との競合のほうが戦いやすいのではないかと私は思っている。その根拠はりそな銀行を再建した細谷英二氏(故人)の「銀行の常識は世間の非常識」という言葉である。