横浜のマンションで傾きが見つかり調べてみると杭が十分に岩盤に届いていなかったことが分かりデータが改ざんされていたことが判明した事件は大きな広がりを見せている。このマンションは「ららぽーと横浜」の近くにあり、以前の私の職場とも近いので気になっていた。調べ始めると改ざんは全国的に広がりマンション市場全体の先行きに影響を与えそうだという。旭化成建材ばかりが責められているがおそらく他にもかなりの業者が改ざんを行っているだろう。実際に作業を行っているのは旭化成建材の社員ばかりではなく、フリーの契約社員などがかなり含まれているはずで、そういう人はほかの会社の仕事もしているだろうと思うからである。
安全にかかわる問題なので、政府は元受けの三井住友建設、下請けの日立ハイテクなどの責任をきちんと追及すべきだろう。旭化成は日立ハイテク仕事を請け負ったわけで、支払いもこのルートのはずである。騒ぎ立てることが目的のマスコミは別として、ビジネス上はこのルートで交渉が行われていると思っている。
過去のデータ改ざんに対して私は「どうすべき」という強い意見は持っていないが、これが建設業界にIoTを導入する良いきっかけになるだろうとは思っている。作業が終わってから人手でデータをまとめて整理するからこのような問題が起こるのであって、作業中にデータをリアルタイムでセンターに送っていればこのような問題は起こりようがないし、作業も効率化する。こういった動きは今後一気に加速すると思う。
今回の事件で改めて明らかになった、下請け、孫請け、ひ孫受けといった業界の多層構造もインターネットで改善のきっかけをつかめるのではないだろうか。実作業をする工務店などが下位の下請けに甘んじているのは仕事をとれる仕組みがないからだろう。流通業界で卸が減って生産者と消費者が近づいているにもかかわらず、建設業界でこれが進まないのは情報の流通がうまくいっていないからだと思う。アリババのような企業が出て、登録すれば仕事の情報がネットで回ってきて、元受と実作業者が直接交渉できるようになれば業界の効率化が進み、国際競争力も上がるのではないかと思っている。
国土交通省に今回の事件をきっかけとして業界構造の見直しに動いてほしいと思うが、たぶん無理だろう。政府側では経産省が内閣府あたりに働きかけて動くかどうか、という感じだと思う。それよりも民間でIoTがらみで一儲けしようという企業が出てくるほうが期待が持てる気がする。