宝塚仁川/山田歯科エクセレンスクリニック 歯科医師・山田忠生
得られた結論は、「馬は水際まで連れて行くことはできるが、馬に水を飲ませることはできない」という古い諺によって最もよく表現されている。これについて、”諺使いの名手”であるボブ・レーボイは次のように付け加えている。「その馬に先ず渇きを覚えさせれば、あとは簡単だ。」
そこで、取り組むべき課題は、患者それぞれに健康で問題の無い口腔が、自分の努力で達成できる目標であると認識させることであり、私はここに力を入れたのであった。
健康な口腔がどのようなものであるか、その真の価値を認めるには、まずは患者が少なくとも一度は経験する必要がある。私はそれまでよりさらに集中的な教育プログラムを目指して行動を起こした。患者は週に1回(重症の場合は2回)の割合で来院した。徐々に成功率は上がっていったが、まだ多くの失敗もあった。
これらの失敗のすべてとは言えないにしても、失敗が生じる多くの理由は、ある興味深い一連の出来事を通して見いだされたのである。実験によって、適切な口腔管理を中止すると歯肉炎が広がったというハロルド・ロー先生の研究論文を読んで、私はその中で特に患者が歯肉溝からの出血を経験したということに関心を抱いた。そして、プラック・コントロールを再開して5~6日後に歯肉溝からの出血は止まった。このことから、プラックが存在するというより、歯肉溝から出血がないということを、適切な清掃が続けられていることを示す目安として用いることを思いついた。
初期のころのいくつかの失敗を思い出しながら、あるいは患者が連毒して6日間清掃を行うのを観察しながら、私はささやかな研究を始めた。ロー先生の観察結果と同じように、ほとんどすべての患者からの出血は5日から6日目に止まった。