宝塚仁川/山田歯科エクセレンスクリニック 歯科医師・山田忠生
私はアーニム先生の考えに興味をおぼえはしたが、私のような個人開業医の許にやってくる患者が、果たして自分の口を清掃する方法を学ぶのにお金を支払うという考え方を受け入れてくれるかどうか疑問であった。つまりは、アーニム先生はテキサス大学から給料が支払われている立場であるのに対し、私はといえば患者から得られるもので生計を立てねばならなかったからである。しかし、幸運にもその同じ年に、私は3人の中の、他の2人の先生とも出会うことができた。アーニム先生の考えを個人開業医として行い、生計を立てていくためには、この2人の先生の考え方がなくてはならないものであった。
その1人は、L.D.パンキー先生である。マイアミで3日間開催されたセミナーにおいて、フロリダ州コーラル・ゲイブルのL.D.パンキー先生から、歯科医業の基盤となる歯科医学の考え方を初めて教えられた。パンキー先生はこの考え方を技術的な面だけでなく、歯科医師と患者との人間関係を扱うものとして捉えられていた。先生は患者を単に解決するべき多くの歯科医学上の病状をもった“モノ”として見なすのではなく、人間として、友人として扱われていた。
私は先生のこのようなアプローチの方法と、その患者を扱うにあたってのあざやかさに勇気を与えられた。先生が患者に話されている内容を記憶にとどめて、それと同じことを私は患者に話した。その結果は惨めなものであった。患者は応じてくれなかったばかりか、多くの患者は私の許を去って行ったのであった。