「二元論」(3)のつづき

2021-02-14 10:22:44 | 「二元論」

         「二元論」


          (3)のつづき

 

 木田元氏は著書「ハイデガーの思想」(岩波新書268)の中で

ハイデガーが思想的転回(ケ―レ)を余儀なくされた経緯を推察して

書いていますが、それによると、「ハイデガーは人間を本来性に立

ちかえらせ、本来的時間性にもとづく新たな存在概念、あそらくは

〈存在=生成〉という存在概念を構成し、もう一度自然を生きて生

成するものとして見るような自然観を復権することによって、明ら

かにゆきづまりにきている近代ヨーロッパの人間中心主義文化をく

つがえそうと企てていたのである。」これだけ読むとりっぱな文明

批判で自然に帰れと言ってるとしか思えないですが、いくつか補足

すると、科学技術は「自然は制作のための単なる〈材料・質料〉」

と看做し、「〈存在=現前性=被制作性〉というアリストテレス以

来の伝統的存在概念は、ハイデガーの考えでは、非本来的な時間性

を場としておこなわれる存在了解に由来する。」つまり、われわれ

が自然と向き合う時に、われわれは本来的な時間性の場である「自

然=内=存在」として存在するのか、それとも「自然は制作のため

の単なる〈材料・質料〉」としか見れないとすれば、われわれは非

本来的な時間性を場とする自然の外へ一歩踏み出すことになる。

 

*「時間性」(テンポラリテート)はハイデガー哲学にとっては中心と

なる重要な概念ですが、実はよく解ってないのでもう少し勉強してか

ら取り上げます。

                         (つづく)