”農”と言える!?

元・食推おばさんのソムリエ日記

ゆっくり、じっくり折戸なす

2016-06-13 10:19:01 | 野菜

一昨日から続いております

JAしみず様による「野菜ソムリエのための学習会 第3弾」のレポート。

最後は折戸なすについて書かせていただきます。

   

折戸なすは、ひとつ200g~230gで出荷される

丸型のなすです。

 

   

味は濃厚で、肉質は緻密でなめらか・・・。

大好きななすです。

  

でも、生っているのを見るのは初めて!!

ガラス温室内は、午前中だというのに30度はあったでしょうか?

まず、驚いたのは一般的なナスに比べて、葉が大きいこと!!

  

そして、とげも鋭いのです。

 

 

見学者が怪我をしないようにということもありますが、

なすの成長を守るためにも、

長袖着用と再三言われた意味がわかります。

   

折戸なすの歴史は古く、

徳川家康公が駿府に在城中、清水の折戸から献上されたと

「折戸村 柴田家文書」にも記載があります。

  

しかし、江戸時代にガラス温室などありません。

油紙障子で温床を作り、馬糞やわらを発酵させて温度を取るなど

ずいぶんと手間をかけないとなすはできませんでした。

  

献上されていたなすのサイズを再現したものを

見せていただきました。

 

 

なんと、この中の一番小さいもの(巨峰くらいのサイズ)が

献上されていたのです。

 

5個を一籠に詰めて、全部で100籠。

当時、1個一両と言われていた、小さな小さな折戸なす。

今で言うと、10万円の価値があるそうです。

   

大政奉還後、献上は無くなりましたが、

15代~17代将軍の時代は、直接お宅に贈呈に伺っていました。

しかし、明治時代に入ると、いつしか忘れ去られ、

折戸なすの栽培の名手であった柴田家からも

種は消えてしましました。

 

  

しかし、三重県茶業試験場に折戸なすの種子が保存されていることが判明。

それを100粒蒔き、そこから種を取り、平成17年に栽培が復活。

平成19年から三保・折戸地区で徐々に出荷が始まりました。

   

現在、生産者様は9名。

  

説明をしてくださった遠藤さんは、こうおっしゃいます。

「今の技術をもってすれば、15t~16tは採れるはず。

 しかし、12t以上はいかない。

 でも、急に上昇した作物は飽きられるのも早い。

 折戸なすは、ゆっくりと上昇していけばよい。」

 

   

折戸なすの出荷は、5月の中旬には始まっています。

なすは、夏の作物ですが、

夏場のガラス温室は大変な暑さで、

また、紫外線が乱反射することにより、

紫色がきれいに出ないという問題もあります。

 

だから、できるだけ早い時期の出荷を心がけているそうです。

  

一度途絶えた在来作物。

そこに携わる方々のご苦労とご努力が、

つややかで丸々とした、味の濃い「紫色」を復活させました。

 

忙しさに追われ、つい気持ちが殺伐となっていましたが、

ゆっくりとじっくりと前に進むことの大切さを

折戸なすが教えてくれました。

 

  

「野菜ソムリエのための学習会」を企画してくださったJAしみず様、

折戸なす生産者の遠藤様、

フジエス枝豆委員会の斉藤委員長様、

心から感謝申し上げます。

 

コメント
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