昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(268)新渡戸稲造の武士道

2018-06-16 08:18:14 | 三鷹通信
 昨日は、三鷹市市民大学「日本の文化」メイン講師の大久保喬樹東京女子大名誉教授による「新渡戸稲造の武士道」だった。
 
 新渡戸稲造は岩手県盛岡市の藩主南部利剛の用人を務めた新渡戸十次郎の三男として生まれた。
 新渡戸家の掛かり付けの医師から英語を学ぶ。
 明治天皇が新渡戸家でご休息されたとき、「父祖伝来の農業に勤しむべし」とのお言葉を賜り、以後農政を志すようになった。
 札幌農学校(後の北海道大学)の二期生として入学。
 キリスト教に興味を持ち、メソジスト派の宣教師メリマン・ハリスから洗礼を受けた。
 論争になれば熱くなって殴り合いも辞さなかった<アクチーブ>は、<モンク>(修道士)と呼ばれる人の喧嘩の仲裁をするほどの姿に変貌していた。

 その後米国留学、ドイツ留学を経て、アメリカでメアリーと結婚、帰国後札幌農学校の教授に赴任するが体調を崩し、カリフォルニアで転地療養をしているとき、名著「武士道」を英文で書き上げ、1900年に刊行。
 ドイツ語、フランス語など各国語に訳され、<日清戦争>などで日本人に対する関心が高まっていたこともあり、ベストセラーとなる。      
 後に臨時台湾糖務局長になり台湾における糖業発展を築くことにも貢献。
 さらに、東京帝国大学法科大学教授と兼任で第一高等学校の学校長となる。
 その後東京女子大学初代学長になった。
 1920年には国際連盟の事務次長となって国際貢献している。

 「武士道」の源泉は、
 であり、
 徳川幕府300年の間に封建武士社会のモラルとして構築されたものである。
 
 日本の封建制度から生み出されたものであるが、日本特異のものではなく、<武士道の光>は今でも私たち人類がたどるべき道徳的道筋を照らし出している。
 ・・・その徳目の中でも特に新渡戸が重要であると強調したのが、孔子が論語で述べた<仁>(惻隠の心)である。
 <母親的美徳>、<敗者に対する仁の心>。・・・
 
 その序文にあるベルギーの法学者との会話が興味深い。
 「あなたがたの学校では宗教教育というものがない、とおっしゃるのですか」とこの高名な学者がたずねられた。 「ありません」という返事をすると、・・・
 「宗教がないとは。いったいあなた方はどのようにして子孫に道徳教育を授けるのですか」と繰り返された。
  その時私はがく然とした。幼い頃学んだ人の倫(みち)たる教訓は、学校でうけたものではなかった。・・・そのような観念を吹き込んだものは<武士道>であったことにようやく思いあたった。
 ・・・この小論全体を通じて、私はいいたいことのすべてを、ヨーロッパの歴史や文学から、類似の例証をあげて説明しようとした。
 なぜなら、このような例証は、外国人の理解をより身近なものにすると思うからである・・・。

 <生麦事件>で責任を取った武士が切腹する場面を見た外国人は驚愕した。
「腹を裂く? なんて馬鹿な」・・・それは外国人の耳には最初いかにも奇妙奇天烈に響くかもしれないが、シェークスピアを学んだものにとってはそれほど特異とも思われないだろう。
 この作者はブルータスにこんな風に言わせているのだ──「汝(カエサル)の霊魂が歩き出し、我らの剣を我ら自身の腹に突き立てるのだ」
 

 <菅原伝授手習鑑・寺子屋の場>という歌舞伎の名場面がある。
「何と残酷な話だ」と言われることだろう。「よその子どもの命を救うために、何の罪もない自分たち自身の子どもを親からすすんで犠牲に供するとは」
 この身代わり死の物語は<アブラハムがイサクを生贄にしようとした物語、旧約聖書の<イサクの幡祭>よりはまだ受け入れられるはずの物語なのである。
 
 ヘンリー・ノーマン氏は言う。
「人類が生み出した最も厳格で高貴か対規律正しい名誉の掟が人々に支配的な影響をおよぼしている」と。
 独立した道徳律としての<武士道>は滅びるかもしれない。
 だが、その力が地上から消えることはないだろう。
 武勇や社会的名誉の教えは廃されるかもしれないが、その輝きと栄光は長く生き延びるだろう。
 その精神を象徴する桜花のように、四方からの風に吹き飛ばされても、人生を豊かにするその香りによって人類を祝福してくれるだろう。
 年月が過ぎてその慣習が葬り去られ、その名さえ忘れられても、その香りは遥か彼方から、もう目には見えない丘から漂ってくるだろう──

 ボクはトランプ大統領と金委員長の「歴史的会談」を取り上げて発言した。
 「これまでパワーによる、ディールで相手を追い詰めるトランプが変身した。<仁>の心の威力に気づいたのでは・・・」と。
 他の方も述べた「金委員長の過去を反省する姿勢に共感するところがあった」と。
 さらに「<サムライジャパン>という言葉もあるが・・・」という先生にボクは「それはフェアプレイナンバーワンという意味ではないでしょうか」と申し上げた。
 ボクにとっても意義深い講義だった。

 
  



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