ウチのペットは会社の倉庫に飛び込んできた十姉妹だったり、娘婿に押し付けられたハムスターだったり特別の経歴の持ち主だった。
その昔、家の庭に銀色のミンクがやってきたことがあった。
これはすばしこくて、さすが捕まえてペットにするわけにはいかなかった。
しかし今一緒に住んでいる雀も家の庭に紛れ込んできたものだ。
まだ充分飛べない幼鳥のくせに捉えられまいと、庭の隅をバタバタと這いずり回っていたのを妻が捕まえた。
「このままでは生きていけない」と既に死んでしまって空いていたハムスターの籠に収納して育てることになった。
最初はものを食べさせるのが一苦労だった。
すでに6年余り先住している十姉妹<チュイぼん天>の食べている剥き餌などを、むりやり口をこじ開けて食べさせようとするが、人間のくれるものなど食えるかとばかり、野生は強情に口をつむぐ。
食べなければ死んでしまうので妻は必死だった。
スポイトを買って来て牛乳と混ぜて流動食にしてようやく飲み込ませることに成功した。
そうこうしているうちにご飯粒なども食べるようになり、彼が我が家で生きていく目途は立った。
<チュン太>という名も付いた。
しかし、手乗りにしたりして飼い慣らすのは、十姉妹のようにはいかなかった。
チュイぼん天は手を差し入れると、チュチュクチュ、チュチュクチュとひと囀りして、頭から掌に飛び込んでくる。
掌にぽっこりと座り込んで、頬や首や胸を書いてもらうのが大好きだ。
完全に身を任せて、極楽でお釈迦様の掌に憩う風情だ。
ところがチュン太はそうはいかない。
手を突っ込むと絶対に捕まらないぞと、ギャーギャー鳴きわめいてバタバタと逃げ回る。
捕まりそうになると、その硬いくちばしでがぶりと噛みついてくる。
これがかなり痛い。
だから娘などは怖がって絶対触らない。
たかが雀である。
その辺にいっぱい飛んでいる雀にすぎない。
家に来るお客にも人気がない。
「雀ねえ」と蔑んだ目で見られる。
「長生きなのね」ぐらいしか評価されない。
誰も可愛いとは言わない。
文鳥のように可愛くないし、カナリアのように可憐な姿と声があるわけでもない。
インコのようにしゃべる芸があるわけでもない。
それからかれこれ十年経つ。
その間に<チュン太>は我が家の家族の一員として不動の地位を占めることになる。
たかが雀も、愛すべき我が家のペットとして成長する。
酉年には我が家の<とり>として年賀状にものせた。
-続くー
その昔、家の庭に銀色のミンクがやってきたことがあった。
これはすばしこくて、さすが捕まえてペットにするわけにはいかなかった。
しかし今一緒に住んでいる雀も家の庭に紛れ込んできたものだ。
まだ充分飛べない幼鳥のくせに捉えられまいと、庭の隅をバタバタと這いずり回っていたのを妻が捕まえた。
「このままでは生きていけない」と既に死んでしまって空いていたハムスターの籠に収納して育てることになった。
最初はものを食べさせるのが一苦労だった。
すでに6年余り先住している十姉妹<チュイぼん天>の食べている剥き餌などを、むりやり口をこじ開けて食べさせようとするが、人間のくれるものなど食えるかとばかり、野生は強情に口をつむぐ。
食べなければ死んでしまうので妻は必死だった。
スポイトを買って来て牛乳と混ぜて流動食にしてようやく飲み込ませることに成功した。
そうこうしているうちにご飯粒なども食べるようになり、彼が我が家で生きていく目途は立った。
<チュン太>という名も付いた。
しかし、手乗りにしたりして飼い慣らすのは、十姉妹のようにはいかなかった。
チュイぼん天は手を差し入れると、チュチュクチュ、チュチュクチュとひと囀りして、頭から掌に飛び込んでくる。
掌にぽっこりと座り込んで、頬や首や胸を書いてもらうのが大好きだ。
完全に身を任せて、極楽でお釈迦様の掌に憩う風情だ。
ところがチュン太はそうはいかない。
手を突っ込むと絶対に捕まらないぞと、ギャーギャー鳴きわめいてバタバタと逃げ回る。
捕まりそうになると、その硬いくちばしでがぶりと噛みついてくる。
これがかなり痛い。
だから娘などは怖がって絶対触らない。
たかが雀である。
その辺にいっぱい飛んでいる雀にすぎない。
家に来るお客にも人気がない。
「雀ねえ」と蔑んだ目で見られる。
「長生きなのね」ぐらいしか評価されない。
誰も可愛いとは言わない。
文鳥のように可愛くないし、カナリアのように可憐な姿と声があるわけでもない。
インコのようにしゃべる芸があるわけでもない。
それからかれこれ十年経つ。
その間に<チュン太>は我が家の家族の一員として不動の地位を占めることになる。
たかが雀も、愛すべき我が家のペットとして成長する。
酉年には我が家の<とり>として年賀状にものせた。
-続くー
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