昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

レロレロ姫の警告(62)三島くん(6)

2013-05-18 05:38:41 | なるほどと思う日々
「でも、夢を持ち続けるのが他の動物にない人間の特質じゃないか!」
 三島くんの目が、これだけは譲れないというようにキラッと光った。
「夢を持って前進し続ける意志を持つことこそ人間の証なんだ!」
 彼は強調するように言葉を区切ってみんなを見回した。
「現に昔に比べれば人間の叡知のおかげで文明は格段に発展している。生活環境はよくなっているし、寿命だって長くなっている!」
 男の子たちが申し合わせたようにうなずいている。
 
「前進し続けるのが人間なんだ。前を向いて、夢を描かない人間なんて考えられない!」
 パチパチと拍手が起きた。

「そんなこと言って、便利で豊かな生活を求めて、問題があるのに先送りしていると、とんでもないことになるわよ!」
 わたしは反射的に叫んだ。
「とんでもないこと?」
 三島くんは何を言っているんだ!という顔でわたしを見た。

「あらまあ、何をお話しているのかしら? むずかしいお顔をしてすごい熱気じゃない! ここらでひと息いれましょう。ケーキを作ってきたから・・・」
 タイミングを計ったように三島くんのお母さんが満面に笑みを浮かべて現れた。
「何このケーキ? スゴイ!」
 
 もう、深刻なお話より現実のお楽しみを!とばかり邦子さんまでが笑顔になっている。
 あれだけ真剣にわたしに反発していた三島くんも率先してケーキに手を出している。
 何よ! 人間て、お菓子ひとつでコロッと態度を変えちゃうんだから!

 ─続く─

 熊さん:このところ橋下大阪市長が慰安婦問題発言で、マスコミの集中砲火で火だるまになってますね?
 
 ご隠居:たしかにね。彼はタブーに触れちゃったからね。
 熊さん:タブーって?
 ご隠居:人の痛いところ、弱みをあからさまに突いちゃいけないんだよ。
 熊さん:だって問題はすべて明らかにして解決するのが政治家の勤めでしょうが?
 ご隠居:いや、世の中は偽善で成り立っているんだ。叡知では処理できない動物的な要素が人間にはまだ残っているということだ。
 熊さん:偽善で成り立っている? いやな言葉ですね。
 ご隠居:お前だって、こそこそと人に言えないことをやってるんじゃないの?
 熊さん:へ、へ、へ、ちげえねえ。