昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

エッセイ(161)文明の進化路線に逆らえるのか(45)涌井雅之氏の講演

2013-05-12 04:49:51 | エッセイ
三鷹市の憲法を記念する憲法のつどいで涌井雅之氏の講演を聞いた。
 題して「環境革命の時代に向けて~新たな市民社会の未来へ~」

 地球に住む我々の<生命圏>は地球の6400キロ(半径)に対してたかだか10キロの薄く、はかない部分に過ぎない。
 しかも地球の65億年の歴史から見ると、人類が今の文明的な生活様式を始めたのは1万年前の農業革命からだ。
 それがこのわずかな期間に人類は悠久の歴史に育まれた自然を、今や食い散らかして豊かな生活を手に入れた。

 地球の環境容量を表わし、人間活動が環境に与える負荷を、資源再生産および廃棄物の浄化に必要な面積として示したエコロジカル・フットプリントという数値がある。
 日本語に言い換えれば、「人間活動が地球環境を踏みつけにした足跡」ということになる。
 現状、どの程度踏みつけにしているかというと、世界全体が今の日本の生活水準並みになるには地球が2.4個必要になる。アメリカ並みなら5.3個である。
 つまり地球の恵みは、もう余裕がないということだ。

 にもかかわらず人間は反省もなく、今なお自然をないがしろにして喰い散らかし続けている。
 時々環境サミットなどを開催して世界の首脳が集まり反省会を開いているにもかかわらず・・・。
 1992年のブラジル・リオデジャネイロで開催された環境サミットで、カナダのセヴァン・スズキという12歳の女の子が伝説のスピーチを行って集まっていた世界の指導者たるおとなどもに痛棒を与えた。
 「私がここで話をするのは、未来に生きる子どもたちのためです。世界中で飢えのために苦しんでいる子どもたちのためです。そしてもう行くところもなく死に絶えようとしている動物たちのためです。わたしは体中ガンにおかされた魚を見ました。そして多くの動物や植物たちが毎日のように絶滅していくのを耳にします。それはもう永遠に戻ってはこないんです。こんなたいへんなことが起っているのに、私たち人間ときたら、まるでまだまだ余裕があるようなのんきな顔をしています。・・・

 オゾン層にあいた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう。死んだ川にどうやって鮭を呼び戻すのか、あなたは知らないでしょう。絶滅した動物をどうやって生き返らせるのか、あなたは知らないでしょう。そして今や砂漠となってしまった場所にどうやって森をよみがえらせるのか、あなたは知らないでしょう。

 どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。

 私の国でのむだづかいはたいへんなものです。買っては捨て、また買っては捨てています。それでも物を浪費し続ける北の国々は、南の国々と富をわかちあおうとはしません。
 ・・・
 もし戦争のために使われているお金をぜんぶ、貧しさと環境問題を解決するために使えば、この星はすばらしい星になるでしょう・・・」
 

今や、物質の豊かさの向上維持に力点を置く<人間中心主義>から、<生命>を中心に据え、人間、動物、植物の平等<生物圏平等主義>を推し進めるべき時に来ているということだろうか。

 涌井氏は、自然と共生することこそこれからの人類の生きる道であることを強調されている。
 3.11の大震災で自然の驚異を見せつけられた。
 大津波に対応するにはさらに高い堤防をというのが我々の発想だが、涌井氏は「それは違う!」と言う。
 自然の力に対抗するのに人間の力で、という考え方が間違っているというのだ。
 武田信玄の<信玄堤>が、水流の勢いを散らしたように、自然の力を<いなす>ことが肝要だと言う。
 彼は「奥さんに対応するように」と粋な喩をしたが・・・。
 福島原発の場合は堤防を高くすることではなく、原発から人間は手を引けということなのかな?

 
 最近NHKテレビのBSドキュメント、オリバー・ストーンが語る<もうひとつのアメリカ史>を観た。
 ただひたすら、強欲な人間社会の現実を突き付けられた思いだった。