昭和のマロ

昭和に生きた世代の経験談、最近の世相への感想などを綴る。

三鷹通信(57)武蔵野公園でバーベキュー(2)

2012-07-03 04:10:55 | 三鷹通信
「ぼくは一度お巡りさんに捕まったことがあるんだ!」
 とつぜん作家先生が叫んだ。
 ぼくはビールよりこっちが・・・と言っていた先生は日本酒久保田を飲んでいたが、小笠原の青島の35度の芋焼酎、青酎にも「香りが独特だね」と関心を示してさらに飲み進めていた。

「高校時代に敦ちゃんというかわいい子がいてね、ぼくは彼女の家まで行ってみたんだ。
 玄関のベルを押そうとするが押せないんだ。そしたら挙動不審でお巡りさんにつかまっちゃって・・・」
「・・・」
「結局、敦っちゃんがお母さんと一緒に迎えに来てくれて・・・ぼくの初恋だよ。みんなも初恋を披露しようや!」
 

 そんな作家先生がとつぜん転調した。
「75歳にもなると、あの世を考えるね・・・」
「いや、ぼくは先生より少し年上だと思うけど、まったくそんなこと考えない」
 ぼくが口を挟んだ。
「シニアデビューしてから、引っ込み思案のぼくはできるだけこういった若い人のグループに参加している。魅力的な女性に会えることを期待してね・・・」
 ・・・人前で話すことが苦手なのでそれを克服しようという目的もあるんだが・・・

「コスモスって歌いいよね」赤シャツくんが言って、話題は歌謡曲に移った。
「詩がいいんだよね」
「最近イケメングループなどが歌っている歌詞は新鮮味がない」
「阿久悠なんか最高だね。津軽海峡冬景色からペッパー警部だぜ」
「彼は天才だね・・・」
「中島みゆきの<地上の星>もいいね。NHKのプロジェクトXの主題歌だろ?」
 

 風の中のすばる 砂の中の銀河 みんな何処へ行った 見送られることもなく
 草原のペガサス みんな何処へ行った 見守られることもなく

 理想でなく、人間の厳しい生き方を歌っている。

 そのうち鉄板奉行の赤シャツくんが締めの焼きそばを焼きだした。
 そして奥さんから電話が入る。
「お会いできなくて残念・・・。お仕事? 研修ですか?」
「キャベツなどの野菜を用意してくれたそうでありがとう・・・」
 電話が廻され、みんなが奥さんと言葉を交わす。

「いや、呼んでもらってありがとう。最近にない最高のパーティだった」
「なんとか天気も持ったわね。暑くもなく最高の日よりじゃない」
「自然の中で食べるって格別だね」
「日本は自然に恵まれているのよ。感謝しなければ・・・」
 始まってから4時間余り。
 予報通り雨がポツポツ来たのでお開きとする。

 ご機嫌の作家先生と派手お姉さんとぼくはバス。
 他はみんな自転車だ。
 大沢交差点でぼくは降りた。
 老犬を自転車の前かごに載せたまじめくんが雨に濡れながら横切って行った。