スティーブン・スピルバーグ監督
「ウエスト・サイド・ストーリー」を見る。
スピルバーグの最高傑作、との宣伝文句が。
ウソつけ、あれだけ傑作がある監督なのによく言うよ。
と思ったら、スピルバーグ75歳にして
ホントに本作が最高傑作かもしれない。
というか、アメリカ映画史上の最高作ではないか。
こんなに完璧なものを見せられて、
もう映画を見るのをやめてもいいかな、と思うぐらい。
すいません。
いきなりシネフィルモード炸裂です。
本作が傑作だというのは
最初からわかっていた。
だって「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」の
オープニングの流麗なミュージカルシーン、覚えてませんか?
あれを見たら、それはそれは躍動感のある
ミュージカルを撮ることぐらいお茶の子さいさい(死語)でしょう。
本作のオープニング。
プエルトリコ移民とプアホワイトが住むNYウエストサイド。
この地域が再開発されようとする場面が映し出され、
崩壊間近の地で繰り広げられる諍いの物語であることが示される。
ジェッツ団とシャーク団が鉢合わせ、
怒り、走り、踊り、戦う。
たたみかけるような追っかけシーンに
これはやっぱり「インディ・ジョーンズ」か。
あるいは「ジェラシック・パーク」か。はたまた「宇宙戦争」か。
と思いつつ、観客を興奮させることは間違いない。
高揚感だけではない。
全編を覆うのは、ぎらぎらしていながら、
どこか寒々しくてざらっとした映像。
撮影監督ヤヌス・カミンスキーの力に負うところが多いのだろう、
シビアで悲しい物語だということが体感できる。
マリアとトニーが出会うパーティ会場。
スピルバーグお得意の逆光の演出で
ぱあっと照らし出されるふたり。その美しさと切なさ。
撮影の映画としての最高峰を目の当たりする幸福を噛みしめる。
虐げられた者同志である
移民とプアホワイトの分断は、
2022年の今でも、たいへんリアルに迫ってくるわけで、
そもそもこの作品は時代を超えた普遍性があるということだろう。
つまりは元ネタの「ロミオとジュリエット」、
シェイクスピアが偉大なのだ。
映像に驚き、感極まり、
世の中の不条理に怒り、悲しむ。
そして恋人たちのほんの一瞬の愛の交歓に喜び、泣く。
映画にこれ以上、何を望めというのか。
なんか絶賛してしまいましたが、
オリジナル「ウエスト・サイド物語」と見比べて、
ああだこうだと講釈を垂れようと思っていた自分は愚の骨頂。
両方とも名作です。以上。