Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

風に吹かれて

2013年07月27日 | 映画など
宮崎駿監督『風立ちぬ』を見る。
『ポニョ』から5年ぶりの新作ということで、
たくさんお客さんが入っているようだけど、
飛行機と風を描かせたら宮崎駿はおそらく世界一で
その映像表現を見るだけでも溜息、というか。



そもそも宮崎駿は「空を飛ぶ作家」と言ってもいいぐらいの人だ。
ナウシカやキキ、サツキとメイも空を飛んだし、
空を飛ぶための装置は、
虫だったりホーキだったり猫バスだったりしたけれど、
ほぼ飛行機的な役割を果たしていたわけで。
登場人物たちが飛んだときの浮遊感、空気の感じが独特で、
宮崎駿の映画を見るたびに、そのときの感覚が心地良かったのを覚えている。

しかし『もののけ姫』あたりから、
登場人物たちはあまり空を飛ばなくなり、
どちらかというと地を這うような描写が
多かったように思う。

それはおそらく宮崎駿は、
現実を見据えようとしたからだろう。
空を飛んでしまうと、どうしても現実から離れてしまい、
ファンタジックにならざるを得ないからだ。
殺戮と争いに終始した『もののけ姫』は
山の斜面を駆けるばかりだったし、
少女が成長するための通過儀礼を描いた『千と千尋の神隠し』は、
なんだか地下にもぐっていくようなイメージというか。
『ポニョ』にいたっては、町が水没してしまう話だった。

そうした地を這うような映画も良かったのだけど、
やはり宮崎駿は浮遊感だよなと、
シネフィルな妄想に耽っていたときにこの新作。

もう飛ぶ飛ぶ。浮く浮く。
飛ぶと現実離れするとわかっているのか、
主人公が飛行機で飛ぶのはほぼ、夢の中である。
その浮遊感は空を飛んでいないときも同様。
関東大震災も描かれるのだけど、リアルではない。
結核の恋人とのやりとりも、たまらなく切ないが、
ファンタジックで、なんだか夢のなかにいるような綺麗さというか。

風の描写も半端ではない。
登場人物の大半は帽子をかぶっており、
風に吹かれるたびに飛ばされないように
手でおさえる場面が頻出。
アニメの動画でいちいち表現するのは
ものすごく大変そうだなと思ったりして、
この映画の白眉は「風と帽子」に尽きると言っても過言ではない。

主人公の声は庵野監督。
『トトロ』のお父さん役に糸井重里を起用したのと同じく、
セリフは上手ではないし、声も良くないのだけど、
次第に慣れていってしまい、主人公の声はこの人しかいないと
思ってしまうのは、監督の術中にはまっているのでしょう。



コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (taco)
2013-08-07 06:54:58
ヒロインは美人なんだけど、
たまにそうは見えない作画が垣間見られたりして、
妙に人間臭いところがあったかな。
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Unknown (denkihanabi)
2013-08-06 23:52:45
でも、主人公は夢の中で必ず墜落するのだ。あの苦さは何なんだ?これまでにはなかった墜落恐怖症ぶりだった。
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