Days of taco

やさぐれ&ヘタレtacoの日常と非日常

両手いっぱいのハンバーガー

2007年08月18日 | 日々、徒然に
久しぶりにF氏と会う。
仕事場近くの台湾料理屋に行き、
小籠包と大根餅などを肴に、
生ビールをほんの少しだけいただく。
それにしても、台湾の食べ物は素晴らしい。

四方山話をしたあと、
共通の知り合いのO氏の話になった。
O氏はとある出版社の編集者で、
今から10年ほど前、頻繁に一緒に本を作っていた。
締切ギリギリになって、僕やライター、デザイナーなどが
編集部に集結して、朝まで仕事をするのが日常茶飯事だった。

あるとき、2日ほどずっと編集部に
缶詰状態で仕事をしていたとき、
O氏は「買い出しに行って来ます」と
言って外出したことがあった。

しばらくして、O氏から電話があり、
「一人じゃ持ちきれないから、来て」と言われた。
何がなんだかわからないと思いながら、
O氏が指定したのはマクドナルドだった。
彼はそこで一人では持ちきれないほど大量のハンバーガーを
買っており、僕に助っ人を頼んだのだ。
ハンバーガーが30個ほど、そしてドリンクが10人分。
おまけにポテトの「大」が10個ぐらいあっただろうか。
缶詰になっていたのは5人ほど。
誰がそんなに喰うのだ? という突っ込みを心の中でしながら、
僕はO氏と一緒に大量のハンバーガーを編集部まで運んだのだった。

編集部に着いたO氏は、
「買ってきましたよー」と満面に笑みを浮かべて
机の上に、ハンバーガー類をどーんと置くのだった。
どんなに腹が減っていたとしても、せいぜい食えるのは3個だろう。
しかもドリンクとポテトも大量にあるときている。
案の定、残りまくりで、仕事が終了したとき、
冷えたハンバーガーとポテトを脱力した目で見る僕たちだった。

O氏の思い出というと、僕はあのときのハンバーガーを思い出す。

「仕事できない奴だったよな」とF氏。
「そうですか」と答えたら、
「どこか抜けた奴だったよ。でも憎めなかった」
「愛されてましたよね」
「ああいう奴は得だよな。ちょっとばかりセンスがあったり、
 人より仕事が少しできるぐらいの奴では太刀打ちできないよ」
「愛されたほうが勝ちだと」
「仕事できなくてもいいんだよな。ああいう奴は」

そのO氏は、今から8年前、
肺の病気で亡くなった。
一緒に仕事をしていたときは、毎日のように顔を合わせていたのだが、
入院してからは一度も会わなかった。

愛されていたから、お通夜や告別式、
そのあとに「おくる会」が催されて、多くの人が彼の死を悼んでいた。
あれからもう8年か。

8年経っても、自分はあまり(というか全然)変わっておらず、
O氏のような愛されキャラでもなければ、
大したセンスや才能で生きているわけでもない。
自分が凡庸であることを渋々噛みしめながら、
仕事を続けている日々だ。

台湾料理屋を出たあと、
「じゃあね、また」とF氏が言った。
「またよろしくです」と僕は答えた。
ビールは2杯ぐらいしか呑まなかったのに、
どうも酔いがまわってしまったようだ。







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