深田晃司監督「さようなら」を見る。
見ていると、たまに心も身体も持って行かれる映画があるけれど、
本作もまさにそんな感じ。なんかすげえ映画を見たというか。
平田オリザの戯曲の映画化で、
原発事故で人が住めなくなった近未来の日本が舞台。
主人公は南アから難民としてやってきたターニャと
お付きのアンドロイド・レオナ。
不治の病にかかっているらしいターニャのもとに、
彼女の恋人や、暗い過去を持つ女友達がやってきて、
ささやかな交流が描かれる。
山間にぽつんと建つターニャの家が
なんとも荒涼感あふれていて、彼女の心の中もきっとそうなのだろう、と。
レオナはそんなターニャの世話をしながら、
若山牧水やランボオの詩をそらんじたりして、
見る者に、生きることと死ぬことの意味を突きつけてくる。
そんなことを思いながら見ていると、
現実世界に戻って来られなくなりそうだ。
「ほとりの朔子」でエリック・ロメールのような
洗練された会話劇を撮ったと思ったら、
今度はタルコフスキーのような詩的なSFをものにした深田監督。
かなりすごい才能かも、とやさぐれたシネフィルは感心しきりなのです。
たまらなく絶望的で。美しくて。
これはすごい。これは素晴らしい。美しく、寂寞としている。(セキバクって言葉、初めて変換した気がする)
「ほとりの朔子」と「淵に立つ」は苦手だったが、これは間違いなく大傑作だ。
まさかのイレーネ・ジャコブだったし。
いやー、いいものを教えていただきました。さんくす。
見たいなこれ。