旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

ヴェルディの美しさに酔うーー佐野成宏コンサート

2008-06-21 15:07:29 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 昨夜、娘の誘いを受けてワイフと3人で上野の東京文化会館に出かけ、テノール佐野成宏コンサートを聞いた。東京文化会館レクチャーコンサート「激動の時代と音楽」シリーズ第1回『イタリア・スペイン編』という長いテーマのコンサートだ。
 レクチャーコンサートと題するだけあって、佐野成宏が自ら解説をして歌っていくので、曲が生まれた時代背景や構成などが良くわかり、佐野の豊かな声量からなる美しいテノールと相まって、「音楽の美しさ」を堪能した。
 前半は、スペインの民謡や歌曲10数曲を聞き、スペインにはこんなに美しい歌がたくさんあるのかと感心したが、圧巻は何といっても後半、ヴェルディの四つのオペラのアリアであった。
 四つのオペラとアリアは、『仮面舞踏会』の「再びあの人に逢える」と「永遠に君を失えば」、『ロンバルディの十字軍』の「私の喜びは呼び覚ます」、『マクベス』の「あ、父の手は」、『ルイーザ・ミラーの』の「夜が静まったとき」。
 その素晴らしさを詳述する余裕はない。ただ私は、その美しさに酔うと同時に、解説を聞きながら、ヴェルディという作曲家がいかにイタリア人に愛されたか、また、これらの美しい曲を誇り高く自己のものにしていったイタリア人の豊かな音楽性をうらやましく思った。
 19世紀のイタリアはオーストリアの圧政に苦しみ、国民は自由と独立を渇望しイタリア統一闘争を進めていた。ヴェルディの曲はイタリア人に希望を与えるものであったと言われる。『仮面舞踏会』の初演はナポリを予定してたが、時の権力に妨害され、ようやくローマで公演されたとき、人々は町中で「ヴィヴァ! ヴェルディ!」と叫びあったという。そしてこの言葉は、ヴェルディの「ヴェ」が統一闘争の象徴「ヴィットリオ・エマヌエレ2世王」の頭文字と重なって、全国に広まったと言う。
 また、ミラノで初演された『ロンバルディの十字軍』は、ミラノ人の反骨精神に受けて大成功したそうだ。
 私の大好きな曲の一つである『ナブッコ』の中の合唱曲「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」も解説されたが、これは今でもイタリア人は国歌のように愛し、歌い続けていると聞く。

 それにしても日本には、どうしてこのような曲がないのであろうか? もちろん美しい歌はたくさんある。しかし国民が一つの目標に向かって一体となって歌うような歌、しかもヴェルディのような美しい曲がない。
 少なくとも「君が代」は、断じてそのような曲ではない。
                            


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1 コメント

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ヴェルディ (TN)
2008-06-21 23:38:01
珍論披露
・「国民が一つの目標に向かって一体となって歌うよ
 な歌」というのは、日本の場合は歴史的には軍歌な
 のではないかという気がします。逆にそういう歌は
 気持ちが悪いなという気もします。
・日本の場合は極東の辺地であったこともあり、元の
 侵攻以外、比較的平和だったこと、ペリーの黒船艦 隊も日本を植民地にするということではなく、通商 を開らかせるということが主目的であったことが日 本が植民地にならなかった大きな要因だったのでは
 ないかという気がします。
・雅楽とか、和歌とか俳句は日本のいい伝統だという 気もします。
・音楽センスゼロの私には発言資格がありませんとい うのが正直なところ。
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