旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

不易流行 … ノーベル賞授賞式の服装に思う

2016-12-14 09:34:44 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 職場でネクタイについて話題になった。30年前、某大手企業に入社した時、「スーツにネクタイ以外はダメ、靴下も紺か黒…」と厳しく言われたが、今や、「ネクタイなど〆ていて仕事ができるか!」と言われる時代になった、ということだ。世の中の変化は目まぐるしい。
 それに対し私は、「ラグビーやサッカーの監督はネクタイを締めている。あの戦いの場でネクタイを締め、立派に仕事をしているのではないか。何よりもあのネクタイ姿はカッコいい!」と述べておいた。
 近年の暮の話題の一つにノーベル賞にかかわる話題がある。日本人受賞者が続いていることもあるからだ。そして私は、あの授賞式に臨む受賞者の美しい姿に見惚れる。それを象徴するのはあのタキシード姿である。今年も大隅良典・東京工業大学名誉教授が医学生理学賞を受賞し、その受賞の様子がさまざまに報じられた。大隅氏のひげ面がタキシード姿に映えて、威厳をたたえなんとも美しかった。ネクタイ姿の勝利である。
 一方、ボブ・ディランの文学賞受賞が、その授賞式不参加も含めて話題となった。ボブ・ディランは、「受賞は大変な名誉。音楽は文学か? という問いに明快な答えを出してくれて嬉しい」とメッセージを送ったが、授賞式へは参加しなかった。氏の不参加の理由は、われわれ凡人にはわからぬ様々な理由があるのであろうが、その理由の一つに服装の事もあるのではないか? 彼は、授賞式に参加するとしてもタキシードはもとよりネクタイは締めないだろう。ボブ・ディランは、あのギターを弾きながら汗まみれで歌う姿でなければならない。しかし、スエーデン・科学アカデミーは、その姿での受賞を許さないであろう。
 世の中は絶え間なく移ろいゆく。ボブ・ディランはその先端を行ってるのかもしれない。またスエーデン・アカデミーは伝統と威厳を守り続けているのだろう。不易と流行……芭蕉の説いた俳諧の理念では、この両者は根本において一つであるとされている。

   
    12月11日付毎日新聞夕刊より


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