娘が音楽教室を開いており、ピアノを中心に生徒が20人ぐらいいる。ほとんどが子供で、30分の勉強時間の大半はおしゃべりしたり、おもちゃで遊んだり、また猫とじゃれているようだ。しかし2年毎に発表会を開いてその成長度合いを家族に披露する。
昨日その発表会が行われた。音の流れはたどたどしいが、日ごろの研さんが着実ににじんでいていじらしい。娘に楽譜の音符の場所を指し示してもらいながら弾く子もいたが、それでもちゃんと両手で和音をとりながら弾いている。ピアノを弾けない私などには感動ものだ。
数名の子が参加しないので娘に聞くと、「恥ずかしくてどうしても嫌だ」という子も2,3人いるらしく、それもまた子供らしく可愛らしいということになった。いろんな子がいていいのだろう。将来どのように伸びていくかは分からない。画一性を強要するより、個性を伸ばすことこそが教育だろう。
発表会の新しい試みとして、娘はオペラコンサートを設けた。プロのオペラ歌手を二人連れてきて、子供と家族に生の声を聴かせた。これはみんな喜び、何よりも目の前で聞くオペラ歌手の美しい大きな声に驚いたようだ。とにかく本物の音楽に触れさせたいというのが娘の願いだ。
今月2日付の日経新聞文化欄に、小澤征爾が『教えることは生きがい』という投稿をしている。その中で小澤は、「日本の子はオペラなんて聞いたことがなかった。ウィーンの音楽家は子供のころからオペラで育っている。差がうんとある。自分の例もあるから若いうちにオペラを教えようと思った」と書いている。
また小澤は、「技術的なことより、音楽に対する姿勢みたいなものが伝わるとすごくうれしい。どういう音楽がいいものか、そういうことが伝わると教えがいがある」とも書いている。昨日聞いたオペラ歌手の生の声が、子供たちの将来にどのように残っていくだろうか?