最後の最後まで、この試合だけは負けると思いながら見続けた。ワールドクラシックの台湾戦である。
相手のエースを打ち崩せず、1点ずつを取られて7回を終えた。対キューバ戦の再現を見る思いで、どう見ても勝てそうにない。このシリーズを通して打線のしめりがそう思わせた。
ところが8回、主将阿部の初ヒットなどで何とか追いついた。しかしその裏、あっさり1点を取られ再びリードを許す。この時点で私は負けを確信した。ところが9回、今まで湿りがちな打線がようやく繋がって同点に追いついた。その裏も薄氷の思いで何とか切り抜け延長戦。
10回の表、再び不思議なほどの打線の粘りで勝ち越した。その時双方とも選手を使い果たしており、10回裏の台湾は最後のねばりを見せたが、最早得点するエネルギーを残していなかった。日本も選手を使い果たしていたので、同点にでもされていればその先はどうなったかわからない。
崖っぷちの勝利とは、このようなことを言うのであろう。日本13安打で4得点、台湾11安打で3得点というのが、この試合のじれったさを示しており、勝負の緊迫感を表している。
「野球はツーアウトから」とか、「何が起こるかわからない」とか言われる。そもそも「勝負は下駄をはくまで分からない」というのがこの世界の金言であろう。それを、これほどまでに実感させられたことはない。