旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

夏目漱石の嘆きーー弱い円

2008-01-10 17:33:14 | 政治経済

 
 昨年秋のヨーロッパ旅行から帰って、「弱い円の旅」と題して
2回のブログを書いた。(07101112日) はからずも、今年1月1日付日経新聞の一面トップは「沈む国と通貨の物語」というもので、弱い円についての連載が始まった。
 
そこには、私が昨秋ロンドン、フランクフルト、リヨンなどで味わったうら寂しい経験がたくさん出ていた。例えば
 
「ロンドンを訪れる日本人がまず直面するのは、地下鉄初乗り4ポンド(950円)、外食代平均39ポンド(9300円)。円安と日本のデフレ・低成長のなせるわざだ。」
などだ。そして面白いのは、約100年前に夏目漱石がロンドンで味わった状況も引き合いに出されていた。
 
1900年(明治33年)ロンドン留学生夏目漱石は、妻に次の手紙を書き送っている。『外に出た時一寸昼飯を一皿位食へばすぐ六、七十銭はかかり候 日本の一円と当地の十円位な相場かと存候』」(以上、前掲日経新聞より要約)

 日本は、維新を経て世界列強へ駆け出そうとした時期、つまり100年前に逆戻りしているのではないか? 
 
先行きも暗いようで、外務省担当者の警告も載っていた。
 
80年代、円高もあって日本は援助大国の道を進み、政府開発援助(ODA)は00年まで10年連続世界一位。だが06年には米英に次ぐ第三位に転落、10年には6位に落ちる。『円安・ユーロ高が進めば欧州がさらに力を増し、日本はかすむ』と外務省担当者は警告。」
 輸出に依存してきた日本は、円高を常に嫌い円安を歓迎し続けている。しかし円安と言うのは、一生懸命に作ったものを安く売り、外国のものを高く買うということだ。こんなあほらしいことはない。漱石が100年前に嘆いていることを、未だよしとしているところに「日本の国情」の大変な矛盾を感じる。
 
何度も引用した日経新聞の記事の中には、元大蔵省財務官行天豊雄氏の、次の言葉もあったことを記しておく。

 
「通貨は経済、政治、文化など総合国力の尺度」である。
                             


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