スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

佐藤昭雄&スピノザとフロイト

2012-12-21 18:39:54 | NOAH
 ハル・薗田は三沢にとってよき先輩であったわけですが,三沢自身が若手時代に世話になった先輩として名前を挙げている選手には,佐藤昭雄もいます。
                         
 佐藤は僕のプロレスキャリアが始まった頃は中堅選手。ソバットを得意にしていて,アジアタッグの王者にもなっていますが,プロレスラーとしてそれ以上のイメージは僕にはありません。ただ,今から思えばこの当時の全日本の中堅選手は泥臭さを感じさせる選手ばかりだったのですが,国際プロレスから移籍してきたマイティ・井上とこの佐藤には,洗練された面があったようにも思えます。
 これがちょうど三沢の若手時代に該当しますが,この頃,佐藤は前座の試合のマッチメークを任されていたそうです。ということはおそらく馬場からも信頼されていたということでしょう。こうした関係から佐藤は試合に関するアドバイスをすることも多かったようです。そして三沢によれば,佐藤は若手にも自由にやりたいプロレスをやることを許してくれたとのこと。三沢は若手時代は先輩の越中との対戦が多く,これは当時の全日本プロレスの前座の花形といっていいカードだったのですが,このカードが花形になったのは,華麗な空中戦が展開されたからです。選手によっては若手がこうした試合をすることを快く思わない場合もあったようですが,佐藤はそれを許し,そのおかげで三沢は頭角を現すことができたので,お世話になった先輩として名前を挙げているものと思われます。
 佐藤は後に全日本プロレスを退社し,WWFに移籍しました。といってもこれは選手として移籍したというわけではなく,フロントとして入団したものです。佐藤自身,プロレスラーとしては大きな花を咲かせることはできなかったといっていいのではないかと思うのですが,ブレーンとしての才覚は高いものがあったのでしょう。おそらく馬場はそれを見抜いていたから,佐藤に前座を任せていたものと思います。そういう意味でいえば馬場には,単にレスラーとして選手を評価するだけでなく,人間としての力を見抜く才能もあったといえるのではないでしょうか。

 哲学として,あるいは形而上学的に,無意識の領域をこれほどまでに顕在化させたのは,スピノザが初めてであったといえると僕は思います。第二部定理一三備考にあるように,スピノザの哲学ではあらゆる形相的有esse formaleが精神mensを有するということになっていて,したがってこの場合の無意識も,厳密にはそういった精神に属するような無意識であると考えるべきでしょう。ただ,『エチカ』第二部を通してスピノザが目指したのは,人間の精神mens humanaの本性essentiaの解明であったといえますから,この場合には人間の無意識の領域を顕在化させたと考えるだけでも十分だと思います。
 実際に,このことの意義は,現在の考察とは関係なく,過小に評価することはできません。人間の精神の無意識の領域を,最初に科学の対象にしたのはフロイトSigmund Freudであったと僕は理解しています。そのフロイトは,スピノザ生誕300年記念論集に寄稿をしていて,そこで自身がスピノザの哲学の成果に格別に高い敬意を払っているという主旨のことを述べています。また,あるスピノザ研究者に対する手紙の中では,自身の精神分析学というものが,スピノザの学説に負っているという点について,それを率直に認めています。
 ただし,実際にフロイトは自身の学説を発表する中では,スピノザの名前にはほとんど触れることはありませんでした。その理由についてもフロイトは述べています。フロイトの精神分析学というのは自然科学です。それは哲学や形而上学ではないのはもちろん,たとえば心理学のような社会科学でもなく,医学や生理学と共通するような自然科学なのです。あるいはその分野を開拓したのがフロイト自身であったということを考慮に入れるなら,フロイトは自身の精神分析学を,そうしたものとして確立することを目指していました。このためにフロイトにとっては,哲学的側面からの自身の学説の正当化は不要だったのです。フロイトはそこまでしかいっていませんが,あるいはむしろ誤解を誘発するような邪魔なものであったかもしれません。
                         
 現在の考察には無関係なのでこの話題はこれくらいにしておきます。フロイトとスピノザの研究は,ヨベルYirmiyahu Yovelの『スピノザ 異端の系譜Spinoza and Other Heretics : The Marrano of reason』で詳しく探求されていますので,興味があるならそれをお読みすることを勧めます。

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