スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

哲学書概説シリーズ スピノザ『エチカ』&第一部定理一四系二

2014-03-17 19:26:12 | 哲学
 スピノザのデカルトからの離反に関しては,河合徳治の『哲学書概説シリーズⅡスピノザ『エチカ』』を参考にしました。
                         
 Ⅱというのはこのシリーズの2作目という意味。ちなみにⅠはデカルトRené Descartesの『方法序説Discours de la méthode』です。
 まず序章でスピノザの哲学的視点が説明されます。あとは五章立て。『エチカ』の概説書ですから,当然ながらその部分は『エチカ』の解説に充てられています。五章から成るのも必然といえば必然。『エチカ』は五部構成になっていますから,各々の章で各々の部が解説されるという仕組みです。
 130ページ弱ですから,『エチカ』を網羅的に解説するということは分量的にいっても困難。実際に援用されていない定理Propositioも多く含まれています。とはいえ概説のために必要であるような部分は含まれていますから,日本語で書かれた『エチカ』の入門書としては非常に優れたものであるといえると思います。ただし,どの部分を詳しく解説し,どの部分は省略するかという判断は,当然のことながら著者である河合の判断に委ねられています。したがってそこには河合独自の視点が反映されているといえるでしょうし,その程度の予断を有した上で読むのが適切であると思います。
 性格的には入門書の部類でしょうから,どちらかといえばスピノザの哲学,あるいは『エチカ』の初心者に向けて書かれた本といえますし,そういった読者を対象に書かれた本であろうと思います。だからといって,そうでない人にとって何の役にも立たないような内容のものではありません。それほど高額な書籍ではありませんから,手元において活用するべき一冊であると思います。
                         
 著者の河合徳治は,現代思想1996年11月臨時増刊の総特集スピノザには,「スピノザの「比の保存思想」とその諸相」という論文を寄稿しています。こちらを合わせて読むと,河合の関心の中心がどの辺りにあるのかということもよく理解できると思われます。

 第一部定理一四で,物体的実体substantia corporeaとは,実体としては神Deusであるということを明らかにした後,スピノザはさらにデカルトからの離反をはっきりとした形で明言しています。それが第一部定理一四系二です。
 「第二に,延長した物および思惟する物は神の属性であるか,そうでなければ(公理一により)神の属性の変状であるということになる」。
 第二にというのは,系二であるからそういわれているだけです。また,公理一とは第一部公理一のこと。第一部公理一の意味から,ここでスピノザが主張している内容が帰結することは,とくに説明するまでもないでしょう。そしてこの系Corollariumに何らかの証明Demonstratioを要するとするなら,それはこの部分だけです。スピノザ自身,この系には証明を付していません。
 第一部定理一一は神の実在を主張しているのであり,これは実在的な意味で把握しなければなりません。第一部定理一四は,そのような実在性realitasを担保された神についての言及といえます。だからそれだけでこの系も実在的な意味を有すると判断しなければなりません。これでみれば僕が物体的実体に関して,その実在を『エチカ』の別の個所に訴えることによって確保したのは,余計な手間であったということも可能でしょう。ただ,この系では延長した物といういい方を用いているのは,スピノザが自分の哲学に引きつけていっているのであり,つまり延長Extensioは神の属性attributumであるという,第二部になってから証明する事柄をすでにここで明らかにしているというのが僕の理解です。一方,第一部定理一三系で,物体的実体といういい方をしているのは,明らかにデカルトの哲学,あるいはもっといえば当時の哲学の共通認識を視野に入れて,それが分割可能であると主張することは誤りerrorであるということを主張する意図があったと解します。この相違を視野に入れれば,単に延長が神の属性であるというだけでは不十分で,いわゆる物体的実体が実在することも,別の仕方で確定させておかなければならないだろうと僕は考えました。

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