スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

大成建設杯清麗戦&近藤の記述

2021-10-27 19:23:49 | 将棋
 仙台で指された昨日の第3期清麗戦五番勝負第三局。
 里見香奈清麗の先手で5筋位取り中飛車。後手の加藤桃子女流三段が玉を完全に囲い終える前に銀を進出させて攻めていく将棋になりました。
                                        
 後手が銀をぶつけてきたので,先手が浮いている歩を突いた局面。後手はここから☖8六歩☗同歩の突き捨てを入れておいて☖7六銀と進出しました。
 角を逃げては☖6七銀成ですから☗7四歩☖7七銀不成☗同桂までは必然。事前に8筋を突き捨てたのですから☖8六飛も当然でしょう。後手は一旦は☗2五歩☖1三角で後手の角の位置を変えてから☗7三歩成と桂馬を取りました。
                                        
 第2図は角と銀桂の二枚換えで駒得をしている先手がと金を作っています。一方の後手の主張は飛車が成り込めるという点。と金と龍は同じ強度で攻められるならと金の価値の方が高いのは当然。なので後手は飛車を成り込んだ後,先手のと金が働く前に攻めきらなければならないのですが,それは無理でした。よって第2図は先手が優勢のようです。第1図で☖8六歩と突けば,第2図までは想定できるところなので,後手の大局観が悪かった一局という結論になりそうです。
 里見清麗が勝って1勝2敗。第四局は来月9日に指される予定です。

 著書で近藤がいってることが正しいということは,ほかのプレイヤーが,パイレーツの手が,大量の得点を見込める形になっていることを理解する場合にも成立します。すなわち,パイレーツが7索や8萬を捨てたときにはそのことには気が付かないのであって,アベマズが8萬をポンした後に,4索をパイレーツが捨てた時点で理解することになるのです。したがって,これ以降とこれ以前では,パイレーツ以外の3人のプレイヤーの打ち方に相違が出てきます。なぜならパイレーツに対して失点しないようにするということも考慮した上で,打つ必要が生じてくるからです。
 たとえこのような状況であっても,パイレーツの立場に立ったときに,あくまでも順位の上昇を目指して打つということも,あり得ないわけではありません。ですから,近藤が自身の第三種の認識cognitio tertii generisが働いた要因として,瑞原というプレイヤーのタイプが示されていることも,理由がないわけではありません。瑞原は,他のプレイヤーの副露に対して丹念にケアをするタイプの選手である。それなのにこの状況でアベマズに対して失点のおそれがある牌を捨てた。それは瑞原の手が,順位の上昇を見込める形になっているからだ,という論理構成は十分に成立するからです。他面からいえば,こういう場合でも副露をケアするより得点の獲得を目指すタイプのプレイヤーが4索を捨てたのであれば,このような第三種の認識は働かなかったかもしれませんし,あるいは働いたとしても,このときほど強く働くagereということはなかったかもしれないからです。ですからこの点についても,近藤が何か矛盾したことをいっているわけではないのです。
 一方,瑞原が他のプレイヤーの副露に対して丹念にケアをするタイプであるという認識そのものの十全性についても,近藤が指摘していることを疑う必要はありません。8萬を捨てたときはもちろん,7索を捨てた時点ですでにパイレーツの手は大量得点を見込むことができる形になっていたので,瑞原はその時点で順位の上昇の方を目指していたのだからです。したがって瑞原は実際にはフェニックスに協力することを意図してこれらの牌を捨てたのではありません。

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