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スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

続・谷津の雑感⑩&不要な限定

2025-03-22 11:51:50 | NOAH
 後に別項で示しますが,続・谷津の雑感⑨で谷津自身がいっている,2代目タイガーマスクがマスクを外して素顔の三沢光晴に戻ることについて,その提案をしたのが谷津自身であるという点については,否定するような資料はありません。なのでここではこのこと自体は事実であるとして先に進めます。ただこの点については,ひとつだけ大きな疑問が残ります。谷津自身がいっているように,この時点では谷津もザ・グレート・カブキもSWSに移籍するということは決定していました。したがって全日本プロレスは,すぐ後には同じ業界のライバル団体になるのです。そのような団体にとってプラスになるようなことをなぜ谷津は提案したのかということが不可解ですし,そのことについて馬場から相談されたとされているカブキがOKを出したのかということも不可解に思えるのです。実際に全日本プロレスにとっての最良の時代というのが,これを契機に迎えることになったのですから,なおのこと僕にはそれが疑問に思えるのです。
 谷津はこの点については次のような説明をしています。自分は全日本プロレスあるいは馬場にはお世話になったので,移籍するにしても何かお土産を残していかなければならないと思ったことです。これは⑨でもいった直接的な原因です。ではそのお土産の内容として何があるのかといえば,天龍源一郎が全日本プロレスを去ったのだからその立場に立てるレスラーを作ることだと谷津は考えました。いい換えればジャンボ・鶴田のライバルになれるレスラーを作らなければならないということです。谷津にはその立場に立てるのは三沢しかいないと思えました。ただタイガーマスクのままでその立場に立つのは難しいので,素顔の三沢に戻すのが最善だと谷津は思ったのです。
 谷津のいっていることは論理的には整合性が取れています。確かにこのとき鶴田のライバルは必要でしたし,その立場に立てそうなのは三沢だけでしたが,タイガーマスクのままでそうなるのはそれまでのイメージが強すぎて無理だったでしょう。だから谷津が馬場に対する感謝の念をもっていたのだとしたら,自分自身が去る全日本プロレスに対してそういう置き土産を残そうとするのは理解できます。

 列挙したこれらの感情affectusを,対人間に限定して考えることに意味がないとは僕はいいません。そのように考察する方が意味がある場合もあるからです。それこそ第四部定理四五備考では,その周辺の憎しみodiumは人間に対する憎しみだけに限定して考えるとスピノザはいっていますが,この周辺の考察は憎しみを人間に対するものと限定してあるから意味があるのであって,そうでなければおかしな結論を導き出してしまうケースもあり得るでしょう。しかし一方で,対人間に限定するといっているのは,対人間とは限らない憎しみがあるということをスピノザが前提しているからであり,したがって憎しみ全般を考察する際に,それを人間に対する憎しみに限定しなければならないわけではないし,そう限定してしまえばみえてこなくなってしまうこともあるということだと思われます。僕が列挙した感情も実際にはそれと同じであって,それらの感情を対人間に限定して考えるがゆえに導き出せる結論というのはあるわけで,その場合は人間に対する感情に限定することは意味があるといわなければなりません。しかし一方で,人間に対する感情に限定しなければならないわけではないのであり,限定してしまえば導き出せなくなってしまうこともある筈なのです。なのでこれらの感情についてスピノザが対人間に限定しているのは,僕には不自然に感じられますし,これらの感情を予め人間に対する感情と規定する積極的な理由があるとも思えないのです。なので僕はこれらの感情について,スピノザは感情論全体として感情を限定しすぎていると解します。買いかぶりexistimatioについてはすでにいいましたが,好意favorも憤慨indignatioもみくびりdespectusもねたみinvidiaも同情misericordiaも,僕は人間の人間に対する感情に限定して考えることはしません。つまりこれらの感情についてのスピノザの定義Definitioに従いません。
                       
 僕が考えてみたいのは,なぜ感情論の中で,このような不必要だし不用意といってもよいような限定が生じているのかということです。動物が感情に触発されることも,表象像imagoが混乱した観念idea inadaequataであることも,そして人間が人間以外のものに対して感情に刺激されるafficiことも,スピノザは理解していたのは間違いないのです。

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