・煌びやかで閉鎖的な貴族社会の暮らしをドラマチックに描写。
18世紀後半、マリー・アントワネットと同時代に生きた英国・デヴォンシャー侯爵夫人・ジョージアナの生涯を描いたアマンダ・フォアマンの伝記小説の映画化。ドキュメンタリー出身のソウル・ディヴによる監督・脚本。米アカデミー衣装賞を獲得している。
ダイアナ妃が子孫でもあるスペンサー家からデヴォンジャー侯爵家へ17歳で嫁いだジョージアナ。現代の夫婦生活とはかけ離れた世界で、夫は世継ぎを生むことだけを望む跡取りのための政略結婚だ。華やかな社交界での人気と煌びやかな生活の陰で、夫との関係は彼女の期待とは違っていた。
それを慰めてくれたのは、親友エリザベス・フォスターで侯爵に同居の許可を得る。皮肉にもその親友を夫に奪われ、<妻妾同居>が続いて行く。
いっぽう文学・政治のサロン主宰者として、女性のファッションリーダーとして脚光を浴びて行くジョージアナ。そこで知り合ったのは政治家を目指すチャールズ・グレイ。紅茶のアール・グレイの由来は彼の名に起因する。後の首相はまだ野心家の若者だった。2人はたちまち恋に落ちる。もともとギャンブル・酒・恋と3拍子揃ったバイタリティ溢れる型破りな女性の生涯は波乱万丈だ。
ヒロイン、ジョージアナを演じたのはキーラ・ナイトレイ。「つぐない」「プライドと偏見」のコスチューム劇でお馴染みの若手女優だ。肖像画を観る限り豊満な女性だったが、細身のナイトレイとはイメージが違う。ただ華麗な衣装を纏っての美しさは引けを取らない。
侯爵に扮したのはレイフ・ファインズ。当時の貴族がそうであったように彼もまた下半身に節操がなく、使用人との間にできた女の子がいた。結婚後もエリザベスとの仲はスキャンダルとなる。
ただ男として見ると同情の余地はある。世継ぎを儲けるというプレッシャーのなか、17歳の娘との結婚は本意ではない。現代風にいえば、結婚と恋愛は別モノというところか?妻が男の子を産む前に好きな男との不倫は想定外だったことだろう。お互い様では済まない侯爵家のスキャンダルはちょうどチャールズ・・ダイアナ夫妻と重なる。「不器用な男だ。」と述懐する侯爵をさりげなく好演しているが、女性からはブーイングが聴こえそうな役柄だ。
チャールズ・グレイ役のドミニク・クーパーは風貌が歴史劇には合わない感じがした。親友でもあり恋敵でもあるエリザベスを演じたヘイリー・アトレルはジョージアナとは正反対の肉感的。3人の子供を元・夫から取り返そうと侯爵を頼るがジョージアナへの親愛も失わない複雑な役。ヘレナ・ボナム=カーターが適役だと思うが、年齢的には無理だったかもしれない。ジョージアナの母にシャーロット・ランプリングが扮していたが、<名家の女の在り方>を諭す凛とした女性で適役だった。
長編2作目のS・ディヴ監督には荷が重かったのかもしれない。史実を元にしたドラマの功罪を背負いながら、このドラマを観た。ちょうどNHK大河ドラマの「篤姫」のように。