晴れ、ときどき映画三昧

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「コットンクラブ」(85・米) 80点

2015-01-30 08:07:27 | (米国) 1980~99 
 ・採点が甘くなる?好きなジャンルを堪能。

 

 ジム・ハスキンスの原作をフランシス・F・コッポラが脚色・監督している。1920年代・NYハーレム地区にある高級ナイトクラブを舞台に繰り広げられる抗争と2組のカップルの物語。実在の大物ギャングを登場させ、組織のなかで伸し上がって行く若きギャングとタップダンサーが主役のドラマ。

 コッポラを起用したのはプロデューサーのロバート・エヴァンス。「ゴッド・ファーザー」のコンビでもあるが、もともとエヴァンス監督、コッポラ脚本でスタートしたもの。殺人事件や確執もあって大モメに揉めた後遺症のせいか、散漫なストーリーで失敗作と云われている。このあたりはR・エヴァンスのドキュメンタリー映画「くたばれ!ハリウッド」(02)でも触れられていた。
 
 それでも厖大な製作費をもとに、セットや美術は凝りに凝って、クラブでのショータイムは往時を完璧に再現できたのでは?と思うほど感動もの。好きなジャンルだけにどうしても甘い採点となってしまう。

 主演のディキシーを演じたのはリチャード・ギア。コルネット奏者からクラブ経営者のオウニー(ボブ・ホプキンス)に雇われ部下となる。コルネットのソロを吹き替えなしで演奏するなど多彩なところも魅せるが、中盤以降は魅力発揮の部分もあまりなく尻つぼみ。愛人役のヴェラを演じたダイアン・レインは見惚れるほどの美しさだが、何と19歳だったというから驚きだ。2人のラブロマンスをもう少し丁寧に描いて欲しかったがコッポラの趣味ではなさそう。
 
 代わりにメインに登場したのはタップダンサーのサンドマン(グレゴリー・ハインズ)。兄とともにクラブ・オーディションに合格して憧れの舞台へ。ソロで踊ることで兄との確執があったり、混血歌手ライラ(ロネット・マッキー)とのロマンスが舞台裏として繰り広げられる。何より本物のタップは最大の見せ場となっている。

 アイルランド系のオウニー・マドゥンとユダヤ系のダッチ・シュルツの実在人物による抗争を背景に、2人の主人公が深く関わるという展開を予想していたがそれほどでもなかった。イタリア系のフレンチーが登場したりディキシーの弟・ヴィンセント(ニコラス・ケイジ)などの絡みもあまり生きてこなかったのは肩すかしの感あり。最近、エンターテインメント・ウィークリー誌に<原作小説に劣る映画化作品・26作>にリストアップされていたのも頷ける。

 それでも、メイン楽団デューク・エリントンやチャップリン、グロリア・スワンソンなどが実名で登場する禁酒法時代の社交場「コットン・クラブ」という高級クラブの雰囲気を臨場感をもって堪能できる、ある意味とても贅沢な作品である。