・ 2人だけの密室サスペンスを映像で楽しむ。
アンソニー・シェーファーの戯曲を、’72にジョセフ・L・マンキウィッツが映画化した「探偵スルース」のリメイク。前回はローレンス・オリビエとマイケル・ケインの2人だけの舞台劇をみるような楽しさがあったが、今回はさらに斬新な映像美が加わった。
M・ケインは35年前後にL・オリビエが演じたベストセラー推理作家アンドリュー・ワイクに扮している。これはプロデューサーを務め、妻の浮気相手マイロ・ティンドル役のジュード・ロウのご指名とか。
加えてケネス・ブラザー監督、ノーベル賞作家ハロルド・ヒンターを脚本に迎えた豪華スタッフ。89分間、決して名前負けしない2人だけの密室サスペンスを堪能した。
社会的な成功者にして富と名誉を兼ね備えたワイクには、若さに対する嫉妬が満ち溢れている。若くて繊細な神経の持ち主ティンドルには、尊大さと知性に欠けている。2人の男がひとりの女を巡り、騙し合いの壮絶なゲームに没頭する。ドラマの中に人間の奥に潜むエゴが見え隠れしてなかなか面白い。
前作と比べ、余韻を持たせたラスト・シーンに好みが分かれるところだが、久々に大人が楽しめる贅沢な映画を観た。