・ 伝説の英雄を俯瞰して描いたP・カウフマンのニュー・シネマ西部劇。
長編3作目のフィリップ・カウフマンがブルース・サーティースのカメラ、デイヴ・グルーシンの音楽を得て、開拓時代末期伝説の英雄となったジェイムズ=ヤンガー強盗団を描いたファン必見の西部劇。
1866に結成されたジェイムズ・強盗団に68年から8年間ヤンガー兄弟が加わり、ミズーリ州で名を馳せる。州議会は民衆に支持者がいることに配慮して特赦を議題にしようとしていたが、痛い目にあった鉄道会社はピンカートン探偵社を雇い、追手を差し向ける。
本作は76追い詰められた強盗団が、ミネソタ州ノースウェストのファーストナショナル銀行を襲撃した経緯をリアル・タッチで追ったドラマ。B・サーティースのカメラが自然光が美しい西部の雰囲気を醸し出し、名手D・グルーシンの音楽がバックを支えてニューシネマらしい映像を演出している。
ジェシー・ジェイムズは<西部のロビンフッド>と仇名されるほど義賊として名高く、映画では30年代から度々登場している伝説の人物。かたやコール・ヤンガーは、その相棒として記憶されているがその歩みはドラマ性に乏しいきらいがあった。
のちに話題となった「ロング・ライダーズ」<(80)・ウォルター・ヒル監督>とともにコールが中心人物として捉えられた数少ない作品でもある。
コールを演じたのは「まごころを君に」(68)でオスカー主演男優賞受賞の実力者クリフ・ロバートソン。革製の防護服を子供たちに見せ、何発も銃弾を浴びたが不死身であることを自慢するパフォーマンスの反面、州議会が特赦を論議する間は犯行を諫めるなど、自分たちの置かれた立場を冷静に読み行動する目端の利いた面もある。
対するジェシーは、コール同様南軍ゲリラから列車強盗へ転身した時代を背負って登場した感のあるアウトロー。本作では巷間言われるような義賊的側面は殆どなく、市民を殺す冷酷な面が強調されている。地主から追い立てされそうな老未亡人にお金を渡し救う美談も、あとで地主を殺し金を取り戻し未亡人が疑われそうな証拠品まで残す人物として描かれている。
ジェシーを演じたのは話題作「ゴッド・ファーザー」(72)で強烈な印象を観客に焼きつけたロバート・デュヴァル。時代に取り残された刹那的男の象徴として描かれるものの、脇役に廻った印象。多面的な人間を演じるにはもってこいの俳優なので適役でもある。
強盗を仕掛けるにもコールは牛の買い入れ業者を装い頭取に信用され、仲間を警備員として送り込むなど用意周到である。ただ時代は刻々と変わり、ノースフィールドではベースボールに興じたり、蒸気自動車が走っていたり、街頭で蒸気オルガンが奏でられたり、ミズーリ州では観たことがないものばかりで目を見張ることも。
強盗が成功しなかったのは、機器蒸気オルガンを精神異常者が弄るのを見張りの手下が銃殺したのがキッカケで、住民達が銀行強盗に気付いてしまう。
カウフマンは時代考証を忠実に投影しリアリズムを追及しながら、変革について行けない強盗団を俯瞰で捉え、かなり突き放して描いている。
義賊として称えられたジェシー=ヤンガー強盗団は、いまや住民たちの反感を買うようになり、コールらの逮捕で一旦終息する。
その後コールは25年服役後反省の自叙伝を出版し社会復帰、ジェシーは6年後自宅で仲間に背後から銃殺された。
こうして伝説の英雄2人は好対照を見せながら悲劇性という面で仲間の誰よりもドラマチックなジェシーの英雄伝説が肥大化していったのだ。
カウフマンはその後の作品「ライトスタッフ」(83)、「存在の耐えられない軽さ」(88)などでメジャーな監督となって行く。本作はそのキッカケとなった作品だが、西部劇ファンでもリアルタイムでは観ていない。筆者も念願叶って観たひとりだ。