・巨匠J・フォードによる西部劇の集大成。
「駅馬車」(39)、「荒野の決闘」(46)、「赤い河」(48)など西部劇で名作を送り続けている巨匠・ジョン・フォード監督作品で、その集大成ともいえる。主演は名コンビのジョン・ウェイン。いつもの深い愛情を正義感で発揮するリーダーという役柄ではなく、弟一家を襲ったコマンチ族への異様な執念で復讐鬼と化した悲劇のガンマンを演じている。
ファースト・シーンが素晴らしい。雄大なモニュメント・バレーの風景をバックにマックス・スタイナーの壮大な音楽に乗って馬上の主人公イーサンが現れる。フレームに納まった<一幅の絵>のようだ。弟一家とは何年も会っていないようで大歓迎されるが、チェロキーとの混血マーティン(ジェフリー・ハンター)が同居しているのを知って好感を持たない。
人種的偏見を露わにして独善的な価値観で目的に邁進する主人公をM・スコセッシ監督は「タクシー・ドライバー」(76)の主人公に重ね合わせたという。
イーサンはインディアンの食料となるという理由でバッファローを銃殺したり、6年も追いかけていた姪のデビー(ナタリー・ウッド)がコマンチ族に染まってしまったのを知り銃を向けたりする。いままでの役柄とはハッキリ違うアンチ・ヒーローぶり。黒い帽子がその象徴でもある。
全体としては暗いストーリー展開であるにも関わらず、随所にユーモアを散りばめて、若いマーティンとローリー(ヴェラ・マイルズ)の恋の行方などもアクセントに織り込んでいる。残虐な殺戮シーンや死体も映像化されていないのも特長のひとつ。J・フォードはあくまでも<家族の一員になれなかった一匹狼・イーサンの悲劇>に焦点を当てている。
美しい・厳しい砂漠・雪の風景、バッファーローの群れ、騎兵隊、カントリーミュージックとダンス、インディアンの白人女性誘拐、馬での追跡、銃撃戦を全て取り入れ流れ者のガンマンを浮き彫りにするための舞台設定だ。映像化したマックス・スタイナーはワイドスクリーンとカラーを充分意識した監督の期待に応え、光と影・遠近のカットなどを駆使、エンディングの素晴らしさも特筆される。
スコセッシを始め、スピルバーグ、<20世紀を代表する作品といった>ゴダールなどプロ達から評価が高いのに反し、オスカーにはノミネートすらされなかった本作。主人公がハリウッド好みのヒーローではなかったからだろう。筆者もゴダールほどこの作品がいいとは思えなかった。