晴れ、ときどき映画三昧

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「秋のソナタ」(78・スウェーデン) 80点

2013-06-24 09:14:05 | 外国映画 1960~79

  ・母と娘の不条理さを冷徹に描いたベイルマン。



家族や親子の関係をいつも冷徹に描写するスウェーデンの巨匠・イングマール・ベイルマンが、リヴ・ウルマンとイングリッド・バーグマンを娘と母に据え、その不条理さを描いている。まるで大女優I・バーグマンの実生活(ロッセリーニ事件)を見せられたような錯覚に陥る彼女の遺作ともなった作品でもある。

 華やかな著名ピアニストである母シャルロッテ(I・バーグマン)と、7年振りに再会するエヴァ(L・ウルマン)は何処となくぎこちない。表面では再会を心から喜んで長期滞在するという母もよそよそしく、夫の牧師ヴィクトールも戸惑いを隠せない。エヴァは脳性マヒで寝たきりの妹ヘレナを引き取っていることを母に披露する。シャルロッテは一瞬嫌な顔を見せたが完璧な母を演じて見せた。


 序盤のハイライトは娘が弾いた拙いピアノ「ショパンのプレリュードNO2」。エヴァが幼いころピアノの練習に明け暮れた母は娘を部屋から追い出して放任したままだった。その娘が村の教会で弾いた曲なので、何らかの言葉が欲しかったのだ。母は知ってか知らずか自分で演奏しながら<始めは抑圧された苦悩、そして一瞬の安らぎ、しかし苦悩の世界に戻る>と曲のレッスンをしてしまう。破綻したまま戻ることのない、母娘関係の象徴だ。

 L・ウルマンは緊張感溢れる親子の関係から、ついに抑えきれずに爆発してしまう母への想いを全身で演じて魅せてバーグマンを圧倒している。流石ベイルマンの秘蔵っ子だ。たいするバーグマンは受け身に回りながらシッカリと受け止め、オスカー3回(主演2回、助演1回)受賞の貫録充分。最後は見事なうっちゃりを見せる。

 北欧の秋は、感傷的なモノ想いも許さないほど厳しいと感じさせる作品だった。


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