晴れ、ときどき映画三昧

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「トゥルー・グリット」(10・米) 85点

2013-06-23 10:04:34 | (米国) 2010~15

 ・意外にもオーソドックスなコーエン兄弟の西部劇。

  

 「ファーゴ」(96)「ノーカントリー」(07)で、アメリカの片田舎を切りとって独特の魅力あるドラマを手がけてきたコーエン兄弟。今回はその集大成では?と思える西部劇のリメイク。チャールズ・ポーティス原作ヘンリー・ハサウェイ監督作品の「勇気ある追跡」(69)がある。父を殺された14歳の娘を助けて犯人を追う酔いどれ連邦保安官を演じたジョンウェインが初のオスカーを獲得している。

 コーエン兄弟は保安官役にジェフ・ブリックスという適役を得て、このヒーローをとても人間臭く深みのある人物像として復活させている。14歳の少女マティを演じるのが、新人・ヘイリー・スタインフェルド。決して美少女ではないが、きっぱりとした立ち居振る舞いで大人顔負けの説得力と信念を持ちながら、あどけなさも抜けない。こんなヒロインはなかなか見つけられないのに、期待に応えた見事な演技だった。
 もうひとり、犯人を追ってテキサスからやってきたラビーフという若いテキサスレンジャーにマット・デイモンが扮している。いま油が乗っていて監督が最も使ってみたい俳優のひとり。ここでは脇に廻って絶妙なトライアングルだ。
 J・ブリックス、M・デイモンという2人のオスカー俳優。そして犯人役のジョシュ・ブローリン、そのリーダーのバリー・ペッパー、これら達者な大人たちを相手に一歩も引けを取らないインパクトある演技を魅せたH・スタインフェルに今後も期待したい。

 残忍な殺人シーンはあるもののシニカルな笑いを抑えたオーソドックスな展開は心地良い。画面からは大自然の厳しさ・美しさを感じ、土の臭いまでしてくるようなロジャー・ディーキンズのリアルな映像が素晴らしい。クライマックスで夜の荒野を疾走する馬のシーンが最も印象的。

 コーエン兄弟が本領を発揮したのは終盤で、単なる痛快西部劇では終わらせずに復讐の代償をこのような形で描いたのは、人間ドラマとして充分見応えがあった。
 


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