晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「ネットワーク」(76・米) 75点

2013-06-14 06:36:34 | 外国映画 1960~79

 ・今日を予測したマスメディアのモラル崩壊

 
 

 TV業界出身のパディ・チャイエフスキーの脚本を、「十二人の怒れる男」(57)「狼たちの午後」(75)などの社会派監督、シドニー・ルメットによって映画化。過激な視聴率争いに巻き込まれた報道番組をテーマにしたドラマでアカデミー賞4部門を受賞した。

かつて高視聴率番組だったUBSイヴニング・ニュース」番組キャスターのハワード・ビール(ピーター・フィンチ)が2週間後番組を降ろされることになった。放送中、視聴率に一喜一憂する業界の内情を暴露して自殺予告する。視聴者を巻き込んだ騒ぎは、思わぬエンタテインメント・ショーへと変革して行く。

 次第にエスカレートしたハワードは、「おれは怒っている、もうこれ以上耐えられない」と視聴者を扇動し、視聴率はウナギ登り。TVメディアは経済戦争に無縁ではなく、巨大資本傘下へ巻き込まれることになり、アラブ資本の新オーナーに替わるとアラブ批判をしていたハワードが、オーナーの直言で大衆の興味を欠く「企業宇宙論」を唱え始め、視聴率はガタ落ち。

 脚本のB・チャイエフスキーはフロリダのニュースキャスターが生放送中に自殺した衝撃的事件をもとにシナリオを書き始めたという。TV業界のモラル崩壊は道化芝居とは言えない真実を包含していると感じたのだろう。業界人の狂気と混乱ぶりは、驚くような幕切れでエンディングを迎える。ハリウッドがこのドラマを高評価したのは、かつてのライバルTVへの皮肉な警告とも受け取れる。

 ハワードを演じたP・フィンチは、オスカー・ノミネート後急死したことで話題をさらい、死後の主演男優賞受賞となった。野心家の編成担当ダイアナ・クリステンセン役で最も輝いていたジェーン・フォンダが主演女優賞、夫である古参報道部長マック・シューマッカー(ウィリアム・ホールデン)に裏切られた妻を、出番が少ない割に好演したベアトリス・ストレイトが助演女優賞をそれぞれ受賞。チャイエフスキーが脚本賞を受賞したのにS・ルメットは受賞を逃しオスカーには縁のない監督となってしまった。
 

「夢売るふたり」(12・日) 80点

2013-06-13 05:12:28 | 日本映画 2010~15(平成23~27)

 ・結婚とは?ある夫婦と様々な女たちの人間ドラマ。

 

 「ゆれる」(06)「ディア・ドクター」(09)で人間の奥に潜んでいた心の内をリアルに描いて魅せた西川美和の長編3作目。

 東京で小料理店を開いて5年目、幸せな夫婦が火事で全てを失ってしまう。常連客との過ちから大金を手にした夫を目にした妻が思いついたのは、結婚詐欺。多彩なキャスティングで西川ワールドを展開する137分は、生々しい人間描写が益々緻密になってきた。

 夫・貫也(阿部サダヲ)は、先天的に優しさと弱さを併せ持った料理人。妻・里子は夫に寄り添いながらも、芯がしっかりしたメゲナイ女。この2人が<白木造りのカウンターのある洒落た料理屋を持つ>夢を果たそうと婦唱夫随?で始めた詐欺行為は、ジワジワと亀裂を深めて行く。キッカケは常連客の鈴木砂羽。愛人の遺言で手切れ金を渡されプライドを傷つけられ、思わず貫也と一夜を共にする。手切れ金が店の再興に役立てば自分が立ち直れると考えたのだ。

 脇を固めた女性たちが多彩な顔ぶれだ。騙される最初の相手は<結婚できないと思われるのが許せない>という出版社のOL(田中麗奈)。さらに暴力男(伊勢谷友介)に追われる風俗嬢(安藤玉恵)、75キロ超ウェイトリフター(江夏由夏)など、何れも結婚に何らかの障害を抱えながら健気に生きる女性たち。

 西川監督はひとりひとりに、<女なるが故に他人に知られたくないような日常>をトキには情け容赦なくリアルに、トキには抒情的に描いて魅せてくれる。その仕打ちは男の筆者には見たくないような場面も随所に登場する。

 ヒロイン里子の変貌ぶりは冒頭の良妻ぶりからは想像できないほど。女にはこんな面が誰にでもあるのだと男たちに示唆しているようだ。貫也を始め登場する男たちは分かり易いキャラクターなのも意図的であろう。貫也はシングルマザー滝子(木村多江)との疑似家族が如何に楽しいものかを知ってしまった。それが、里子に与えた衝撃は計り知れない。

 この夫婦と女性たちの物語は、様々な人間模様が描かれちょっぴり散漫な印象は拭いきれないが、キャスティングの妙とそれを承知で彼女達を丁寧に描いたことで開花したといえる。
 

「お日柄もよく、ご愁傷さま」(96・日) 75点

2013-06-12 07:31:27 | 日本映画 1980~99(昭和55~平成11) 

 ・小津の世界を90年代にタイムスリップさせたホーム・コメディ。

 

 東京に住む中年サラリーマン家庭に次々と起こった出来事を通して、家族の絆を確かめ合うハートフルなホーム・コメディ。

 原案と監督は「相棒」シリーズの和泉聖治。今でこそ売れっ子の監督だが、17年前はVシネマの監督として知られていた程度で、ホーム・コメディとは無縁の世界のヒト。デビューは72年でキャリアは長いが、もっぱらピンク映画専門の苦労人。
 小津の世界を90年代にタイムスリップさせたような良質なハートフル・コメディを誕生させていた。

 主演は、橋爪功でTVで幅広い役柄でお馴染みの俳優が映画では本作が初主演。本作で見事日本アカデミー賞主演男優賞を受賞している。筆者にとって印象深かったのは刑事ドラマより「仕掛け人・梅安」シリーズでの彦次郎役。目立たないが秘かに目的を果たすためには全てを投げ出す一途な男が印象的だった。
 ここでは何処にでも居そうな平凡なサラリーマン。これが俳優にとってはイチバン難しい。観客は現実を知っているからウソ臭さは直ぐに見破ることになるからだ。友人に懇願され初の仲人を務めることになって一所懸命練習。いよいよ当日になって、昨日まで元気だったお爺ちゃん(松村達雄)が急死。
 こんなことは同時に起こることは滅多にないが、起こらないとは言い切れない。興味と同情を交えながら映像を観ることに。臨月の長女(伊藤かずえ)は夫(布施博)の浮気に怒って家に戻っているし、次女(新山千春)は付き合っている男がいるらしい。これから
何かが起こりそうである。

 改めて感じたのは17年前は3世代同居の家族があって、それぞれの交流があったこと。家には固定電話しか通信手段がないのは今は昔。お爺ちゃんが亡くなると、孫が大泣きする時代だったのだ。娘(根岸季衣)の売れない脚本家(西岡徳馬)との結婚を大反対していた、かつてのお爺ちゃん。こっそり新聞記事をスクラップしていたなんて人柄が偲ばれ、家族の絆を感じる。

 一家の主婦を演じたのは吉行和子。才人一家に育ち、のんびりしたお嬢さまだった彼女も本作では61歳。とても若くて橋爪とは6歳年上とは思えない。「愛の亡霊」(78)での主演を始め、「佐賀のがばいばあちゃん」(06)など幅広い役柄をこなす貴重な女優だ。

 一歩間違えるとドタバタに成りかねないこのドラマは達者な俳優たちと布施博一の脚本が手堅い手法で纏まりのあるものとなった。

 
 

 

「ディア・ドクター」(09・日) 80点

2013-06-11 07:51:29 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

 ・心理描写をグレーゾーンで表した佳作。

 

 前作「ゆれる」(06)で一躍評判を呼んだ西川美和の長編2作目。直木賞候補に名乗りを挙げた「きのうの神様」を自身で脚色・監督している。

 人口1500人の神和田村は半数が高齢者。唯一の伊野医師が行方不明となって大騒ぎとなる。村人たちが神とも仏ともたよりにされていたのに、警察が捜査すると意外な事実が明らかになって行く。

 西川監督は四国で起きた<白タクの運転手が逮捕されて、老人たちが病院へ通えなくなったニュース>を知って僻地医療問題に関心を持ったという。若手女流という肩書抜きで最も期待されている監督のひとりだが、主人公・伊野に自身を投影しているという。置かれた環境でボールを打ち返しているうちに、周りの評価がドンドン高まって重荷になってしまうことらしい。
 本物と偽物、シロとクロの区別は一概にはいえないというグレーゾーンが大勢を占めている現実社会。徹底取材をもとにしたリアルなストーリーを背景に、人間の持つ可笑しさや愛おしさを的確に表現。心理描写をグレーゾーンで表した佳作である。

 キャスティングがとても絶妙。主演した笑福亭鶴瓶は、演技不足をTVで見せる人懐っこい笑顔を見事に活かし得体のしれない不思議な人物像を作り上げている。
 研修医役の瑛太は、今どきのボンボンで素直な若者を等身大で好演していて、2人のコンビネーションがドラマの核となっている。

 いつ観ても達者な看護師役・余貴美子、薬品会社の営業マン・香川照之が脇をしっかりと支え、ベテラン八千草薫(かづ子)と井川遥か(りつ子)の親子も後半のキーとなって澱みない。出番は少ないが村長・笹野高史、大病院の医師・中村勘三郎も印象に残る。

 撮影の柳島克己、照明の尾下栄治、編集の宮島竜治など一流スタッフが何気ない日常生活を切りとった映像はリアルな雰囲気を醸し出している。独り暮らしのかづ子の台所はセットとは思えないほど臨場感たっぷり。伊野と2人でTVの野球中継を見たり、カセットで古典落語(馬生の「親子酒」や志ん生の「たちきり」)を聴くシーンなどは、筆者が若い頃の体験と重なってしまう。
 若い人にはゆっくりした流れが物足りないと思うかもしれないが、何気ない会話でその<人となり>が巧みに織り込まれている。観客の想像を膨らませて行く手法は、この監督独特の特長であろう。

 主人公を愛するあまり?ラスト・シーンを書き加えたようだが、なくても良かったような気がする。

「親愛なるきみへ」(10・米) 75点

2013-06-09 11:10:58 | (米国) 2010~15

 ・ベタな恋愛劇を避けたハルストレム監督。

                  

 ニコラス・スパークスの原作「きみを想う夜空に」を、「サイダー・ハウス・ルール」(00)、「ショコラ」(01)のラッセ・ハルストレム監督が映画化。

 サウスカロライナの海岸で米軍特殊部隊兵士と、心優しい大学生が運命の出会いで恋に落ち、除隊後結婚を誓いあう。手紙のヤリトリで愛を確かめ合うが、除隊の直前に9.11事件が起き、2人を取り巻く環境が変わってしまう。それぞれ問題を抱えながら、家族とくに父と息子の関係が浮き彫りにされてゆく。

 原作は未読だが、作者は「きみに読む物語」でお馴染みのベストセラー作家で映画化獲得競争になったという。おまけにハルストレム監督なので期待が膨らんだ。

 キャスティングを特に大切にする監督らしく、主人公ジョンにチャニング・テイタム、ヒロインのサヴァナにアマンダ・サイフリッドという売り出し中で勢いのある若手を抜擢。2人の恋愛劇を柱に、自閉症で外出を避けコイン収集に没頭するジョンの父にリチャード・ジェンキンス、サヴァナの隣人で自閉症の息子と暮らすティムにヘンリー・トーマスを配している。

 序盤で銃弾を受け意識が薄れるジョン。想い起こしたのはサヴァナではなく、父親が大切にしているエラー・コインだった。

 ジョンとサヴァナの純愛は電撃的で、僅か18時間の余暇も飛んで帰るほどの熱愛振りだったが、9.11事件発生で2年延長を決めたジョン。2人は手紙でのやり取りが続くが、携帯・インターネットで頻繁に愛を確かめ合う現代の若者たちにとって、手紙だけの遣り取りはもどかしい。

 それだけ想いが募ると分かっていても現実的ではない。本作でもジョンの赴任地が極秘であっても電話は通じていて、サヴァナは電話でも話せたのに・・・。

 知らなかったがアメリカでは「Dear Jonn Letter」と云う言葉があり、<女性が男性に別れを告げる手紙のこと>なんだとか。ちなみに本作の原題は「Dear JOHN」である。

 「欠点を抱えた人間の<声にならない感情を描く>人間賛歌」を信条としているハルストレム監督に、ベタな恋愛劇を期待してはいけない。

「かあちゃん」(01・日) 80点

2013-06-08 16:52:49 | 日本映画 2000~09(平成12~21)

 ・古典落語の雰囲気を映像化した市川崑の人情時代劇。

  

 山本周五郎の小説を愛妻・和田夏十が脚本化した人情時代劇。かつて’58年(昭和33年)に西山正輝監督、沢村貞子・林成年主演で映画化されたが、和田には不本意だったようで夫の監督で再映画化を企画していた。愛妻の死後18年を経て竹山洋の筆を入れ実現した。

 天保末期、江戸の貧乏長屋に住む5人の子供を持つ、おかつ(岸恵子)一家。けちんぼ家族と陰口を叩かれるには理由があった。金をこっそり貯めているのを小耳に挟んだ勇吉(原田龍二)は、夜中こっそり忍び込むが、針仕事をしていたおかつに見つかってしまう。

 市川監督は、古典落語の表現手法を映像化したようで、落語がもっている独特の雰囲気を人物描写やカット割りに取り入れている。台詞まわしも敢えて棒読みで感情表現もストレート。筆者が子供の頃から慣れ親しんでいたラジオから流れる古今亭志ん生の語り口を思わせる。

 色調は独自の銀残し(シルバー・カラー)で西岡善信の長屋のセット、五十畑幸勇のカメラは固定カメラで横一列の平面撮りや俯瞰撮影で江戸の貧乏長屋の情緒たっぷり。思わず嬉しくなるような映像のオンパレードだ。

 主演のおかつを演じたのが市川監督お気に入りの岸恵子。裏長屋のおかみさんとはオヨソ雰囲気が違うのに、なぜか一家を支える凛としたしっかり者で困っている人は放っておけない人情家を見事にこなしていたのは流石だ。この年の日本アカデミー賞主演女優賞を獲得している。
 勇吉を演じた原田龍二は、親に捨てられた孤児の割には品が良すぎるが、人情話にはもってこいのイイひとでキャスティングされたのだろう。
 日頃からキャスティングが演出の7割を占めるという市川監督。うじきつよしの長男・市太、大工の熊五郎・石倉三郎、大家の小沢昭一など成程と思わせる人選である。一家を誹謗中傷する四人組(中村梅雀・春風亭柳昇・コロッケ・江戸家子猫)などは絶妙のバランスで舞台や連続時代劇で何度も観てみたいと思わせるほど。
 さらに同心に音楽も担当した宇崎竜童、易者に常田富士男、源さんに尾藤イサオなど適役を配し万全の態勢だった。

 いまどきこんな善意の固まりのような人々は古典落語や講談・浪曲以外お目に掛かれそうもないが、晩年の市川監督が愛妻への鎮魂とともに、<人の善意ほど尊いものはない>という時代へのメッセージだったかもしれない。

「サーカスの世界」(64・米) 70点

2013-06-05 10:59:06 | 外国映画 1960~79

 ・70mmの大型スペクタルが見せ場のサーカスもの。

  

 19世紀末、サーカス全盛期の欧州を舞台に、ジョン・ウェインが団長に扮した70mmスペクタル・ドラマ。監督はフランク・キャプラだったが、脚本のジェームズ・エドワード・グラントとソリが合わず、ヘンリー・ハサウェイに替わっている。

 アメリカ最大のサーカス団の団長マット(J・ウェイン)は、古株のキャップ・カーソン(ロイド・ノーラン)の心配をよそにヨーロッパ巡業を決断する。かつて一座の花形空中曲芸スターだったリリー(リタ・ヘイワース)を探すことも理由のひとつだった。一座には成長した娘のトニ(クラウディア・カルディナーレ)がいた。サーカス一座を背景に母と娘の再会による物語が繰り広げられる。

 サーカスをモチーフにした作品は数多くあるが「地上最大のショウ」(52)と並ぶ規模の大きさで最大の呼び物はスペクタル・シーン。なかでも前半はタイタニックのような巨船の横倒しで、50年前の撮影手法では考えられない迫力。後半はテントの火災シーンもあって水と火・2つのヤマ場は圧巻だ。
 主演のJ・ウェインも「ワイルド・ウェストショー」で疾走する馬に跨り、ライフル銃を撃ちまくるなど得意の芸も披露する。

 テーマとなった母娘には40年代のファムファタール、R・ヘイワースとイタリアで人気絶頂のC・カルディナーレが扮し彩りを添えている。なかでも「血と砂」(41)でタイロン・パワー、「踊る結婚式」(48)でフレッド・アステアを相手に男性ファンを魅了し、「ギルダ」(49)でセックス・シンボルとしてその地位を不動のもととしていたR・ヘイワースが見られたのは拾い物。40代半ばにしてしなやかな身のこなしは、吹き替えシーンとは感じさせない見事さ。対するC・カルディナーレは前年「ブーベの恋人」「山猫」とヒット作に出演し、B・B(ブリジッド・バルドー)からC・Cの時代と言われた時期。ハスキーな声でキュートさが売りだが、今回は貫録負けの感あり。
 男優陣ではトニの恋人役でララミー牧場のジョン・スミスが出ていたのがお茶の間ファンとしては懐かしい。またゴッドファーザーでボス・バルジーニを演じたリチャード・コンテの道化役も意外性があって面白かった。ロイド・ノーランの役は当初デヴィッド・ニーヴンが予定されていたというが、もし演じていたら趣きの違う作品になったかもしれない。

 ディミトリ・ティオムキンのいつもとは違う哀愁漂う音楽や、サーカスならではの猛獣・曲芸なども臨場感はあるが、肝心のストーリーが陳腐なので、高得点はつけられなかった。


「七人の侍」(54・日) 90点

2013-06-03 07:54:44 | 日本映画 1946~59(昭和21~34)

 ・日本映画の代表作。

 

 黒澤明監督の、というより日本映画のベスト3に入る作品。ヴェネチュア国際映画祭銀獅子賞を受賞した。

 戦国時代、野武士が農家を襲い略奪が横行していた。農民たちは長老・儀作(高堂国典)の教えで、自衛のために侍を雇うこととした。条件は飯をタダで食わせるというもの。農民4人は街へ出て初老の老人に縋る。名前は島田勘兵衛(志村喬)といい、冷静沈着なリーダーシップを兼ね備えている。

 作品は個性豊かな七人の魅力と、農民(ここでは百姓)たちの様々な性格が相まって、まるで西部劇のような一大エンタテインメント。のちにユル・ブリンナー主演でリメイク(荒野の七人)されたのも納得。

 勘兵衛のモデルは上泉伊勢守で、人質の子供を救うシーンはそこから取っている。無口で孤高の剣客・久蔵(宮口精二)は宮本武蔵のイメージ。粗野で天真爛漫ながら人懐っこい菊千代(三船敏郎)は、カードならジョーカー。

 いまでは当たり前だが、当時の時代劇の常識を打ち破った画期的なストーリーと映像が日本映画の代表作である所以。何度観ても新鮮な驚きがあって不朽の名作である。ひとつだけ注文があるとすれば、台詞が聴き取れないところがあること。半世紀前の技術では、止むを得ないが・・・。