晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「スリーデイズ」(11・米) 75点

2013-06-15 06:24:06 | (米国) 2010~15

 ・ドキドキ感がバージョン・アップ

 

 「クラッシュ」(06)以来話題作を送り続ける名脚本家でもあるポール・ハギスが、フランスでヒットした「すべて彼女のために」(10)をリメイク。普通の家族が極限の状況に追い込まれたときのドキドキ感をさらにバ-ジョンアップさせた133分。

 オリジナルと比較して、ハギス流がどう表現されたかが最大の興味だったが、サスペンスの度合いはこちらの方が断然上だろう。オリジナルを尊重しながら主人公の心の変化がどう行動に結びついたかにエネルギーを費やしたあまり、テンポの良さテンポの良さに欠けるきらいはあるが、妻が無罪かどうかが終盤まで分からない構成はスリリングだ。オリジナルではなかった、公園で出会ったシングルマザーとの交流が終盤で予想外の展開に繋がる作りは成程と思わせる。

 ハギスの拘りは場所の設定とキャスティングにあるが、場所はペンシルバニア州ピッツバーグ。労働者階級が多い街の景観や郡刑務所は橋・トンネルで区切られ警備がしやすく、ストーリーにぴったりだ。

 主人公を演じたラッセル・クロウは監督が熱望しただけあって、目だけで内面を表現し、無駄な台詞を要しない心の演技を見せている。中盤までは失敗をしながら懸命な普通の中年男が、後半銃を持ったり、カーチェイスをしたりアクション・スター風になってしまったのは残念!

 妻のエリザベス・ベンクスはか弱い女のイメージが強く、上司と激しく口論する女にはみえなかった。この役はオリジナルのダイアン・クルーガーに軍配を挙げたい。

 もっとも存在感があったのはリーアム・ニーソン。ワンシーンながら主人公に最も影響を与え、<脱獄するよりも逃げ続けることが困難>だという根本的な命題を示唆している。

 本作で主人公が万策尽きて取った行動は、オリジナルでは感じなかったモヤモヤが頭をよぎってしまった。丹念な人間描写に長けたハギスならではの弱点が見え隠れ。ハギスにはリメイクではなくオリジナルで勝負してもらいたい。