晴れ、ときどき映画三昧

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「サーカスの世界」(64・米) 70点

2013-06-05 10:59:06 | 外国映画 1960~79

 ・70mmの大型スペクタルが見せ場のサーカスもの。

  

 19世紀末、サーカス全盛期の欧州を舞台に、ジョン・ウェインが団長に扮した70mmスペクタル・ドラマ。監督はフランク・キャプラだったが、脚本のジェームズ・エドワード・グラントとソリが合わず、ヘンリー・ハサウェイに替わっている。

 アメリカ最大のサーカス団の団長マット(J・ウェイン)は、古株のキャップ・カーソン(ロイド・ノーラン)の心配をよそにヨーロッパ巡業を決断する。かつて一座の花形空中曲芸スターだったリリー(リタ・ヘイワース)を探すことも理由のひとつだった。一座には成長した娘のトニ(クラウディア・カルディナーレ)がいた。サーカス一座を背景に母と娘の再会による物語が繰り広げられる。

 サーカスをモチーフにした作品は数多くあるが「地上最大のショウ」(52)と並ぶ規模の大きさで最大の呼び物はスペクタル・シーン。なかでも前半はタイタニックのような巨船の横倒しで、50年前の撮影手法では考えられない迫力。後半はテントの火災シーンもあって水と火・2つのヤマ場は圧巻だ。
 主演のJ・ウェインも「ワイルド・ウェストショー」で疾走する馬に跨り、ライフル銃を撃ちまくるなど得意の芸も披露する。

 テーマとなった母娘には40年代のファムファタール、R・ヘイワースとイタリアで人気絶頂のC・カルディナーレが扮し彩りを添えている。なかでも「血と砂」(41)でタイロン・パワー、「踊る結婚式」(48)でフレッド・アステアを相手に男性ファンを魅了し、「ギルダ」(49)でセックス・シンボルとしてその地位を不動のもととしていたR・ヘイワースが見られたのは拾い物。40代半ばにしてしなやかな身のこなしは、吹き替えシーンとは感じさせない見事さ。対するC・カルディナーレは前年「ブーベの恋人」「山猫」とヒット作に出演し、B・B(ブリジッド・バルドー)からC・Cの時代と言われた時期。ハスキーな声でキュートさが売りだが、今回は貫録負けの感あり。
 男優陣ではトニの恋人役でララミー牧場のジョン・スミスが出ていたのがお茶の間ファンとしては懐かしい。またゴッドファーザーでボス・バルジーニを演じたリチャード・コンテの道化役も意外性があって面白かった。ロイド・ノーランの役は当初デヴィッド・ニーヴンが予定されていたというが、もし演じていたら趣きの違う作品になったかもしれない。

 ディミトリ・ティオムキンのいつもとは違う哀愁漂う音楽や、サーカスならではの猛獣・曲芸なども臨場感はあるが、肝心のストーリーが陳腐なので、高得点はつけられなかった。