晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『ラストキング・オブ・スコットランド』 85点

2007-04-14 13:01:57 | (米国) 2000~09 

ラストキング・オブ・スコットランド

2006年/アメリカ=イギリス

アミンの多面性を見事に演じたF・ウィテカー

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 85

ストーリー ★★★★☆85点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

ウガンダ大統領イディ・アミンを青年医師ニコラスの視点で描いたドキュメンタリータッチのドラマ。ご存知フォレスト・ウィテカーがアカデミー主演男優賞をはじめ各賞を総なめにした。
元ヘビー級チャンピオンで庶民の英雄でもある家族を愛する気さくな側面と、側近すら許さない裏切りに怯える臆病さ、反体制を徹底的に弾圧する冷徹さ、自分の栄誉を守る執拗さなど多面的な性格を見事に演じ切っている。
理想に燃えてウガンダに渡った青年医師ニコラス(ジェームス・マカヴォイ)がアミンの人柄に惹かれ側近になり、知らず知らずのうちに大量の殺略に加担してしまう皮肉な現象を見せられるところがミソ。
先輩医師の妻サラ(ジリアン・アンダーソン)、アミンの第2夫人ケイ(ケリー・ワシントン)との絡みもあり、側近のワッサナ保険大臣やストーン高等弁務官(サイモン・マクバーニー)の存在もこのドラマに厚みを増している。なかでも「Rey」で好演したK・ワシントンの美しさが魅力的。
アジア系ウガンダ人の追放や、パレスチナ人によるエール・フランス機ハイジャック事件などの史実を踏まえ、ドラマチックな展開となっている。ガイルズ・フォーデンの原作をドキュメンタリーが得意なケヴィン・マクドナルド監督が本領を発揮した。


『ママの遺したラヴソング』 80点

2007-04-13 20:12:26 | (米国) 2000~09 

ママの遺したラヴソング

2004年/アメリカ

ジョン・トラボルタが新境地を開拓

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆80点

ジェイニー・ゲイベル監督が撮影まで5年を要したヒューマン・ドラマ。
スカーレット・ヨハンソンとジョン・トラボルタの新鮮な組み合わせが魅力的だ。S・ヨハンセンは幼さが残る孤独な18歳の役で’04当時がギリギリのタイミングだったろう。投げやりで怠惰な生活から必死に生きようとしている少女を好演している。
ジョン・トラボルタがアルコールに溺れた元大学教授でギターを手に唄うなど、今までとはガラリと違うソフトな演技で新境地を開いた。
チョッピリ長いがこのドラマの展開では必要な要素なのだろう。タイトルからも想像できるような終盤を迎えるが、この映画にこれ以上のどんでん返しは必要ないのかもしれない。


『素粒子』 80点

2007-04-07 15:55:19 | (欧州・アジア他) 2000~09

素粒子

2006年/ドイツ

愛に悩む男を好演したM・ブライプトロイ

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆80点

「セクシュアリティ」をテーマにした、映像化するには難しいと思われるミシェル・ウェルベックの原作を、オスカー・レーラー監督が映画化した問題作。なかなか将来性のある監督だ。
異父兄弟のブルーノ(モーリッツ・ブライプトロイ)とミヒャエル(クリスティアン・ウルメン)は母親(ニーナ・ホス)の影響で愛と性がトラウマとなっている。
ブルーノは国語教師で妻子がいながら、幼い頃の母親のヒッピー生活の影から逃れられず精神を病んでいる。妻に離婚され、ヒッピーのキャンプ場で知り合ったクリスチアーネ(マルチナ・ゲテック)と出会い、初めて性と愛が一致することを知る。
ミヒャエルは生物学者で母親が反面教師となり幼馴染みアナベル(フランカ・ポンテ)の愛も遠ざけてしまう。
対照的な2人だが、現代の男は極端ではないけれど思い当たるフシがあるのでは?
そして2人が幸せを掴みかけた途端、それぞれ皮肉な一波乱があって、人生は絵に描いたような幸せを得ることはないと思わせる。心の安らぎを得る大きな要因に、「愛する人と暮らすこと」という平凡な結末を暗示しているラスト・シーンに少し安堵する。同時に今後人間はクローン人間と私生児しか生まれないのでは?という不安もまんざら冗談では済まされない。
M・ブライプトロイが屈折した愛に悩む男を好演している。「マーサの幸せレシピ」「善き人のためのソナタ」のマルチナ・ゲテックが複雑な中年女を見事に演じていて、内面の演技の確かさを見る思い。


『逆転』 80点

2007-04-05 17:00:31 | 外国映画 1960~79

逆転

1963年/アメリカ

P・ニューマンの軽妙な味

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 80

ストーリー ★★★★☆80点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆80点

音楽 ★★★★☆75点

マーク・ロブソン監督ポール・ニューマン主演のサスペンス。
権威あるノーベル賞をテーマにしたサスペンスというとシリアスなものを想像するが、予想に反してコミカルな味付け。受賞者は、夫婦が受賞していながら夫が愛人を同行させたり、同じ研究を評価されたのにライバル心剥き出しだったり人間性豊かで風刺が効いている。
文学賞を受賞したクレイグ役のポール・ニューマンは独身で女好きの大酒飲みでこれも型破り。エルケ・ソマー、ダイアン・ベーカーを相手に軽妙な味を出していて、探偵のような大活躍。
題名のような「逆転」はなく、一見ミスマッチのようなストーリーなのにとても楽しく観られた。


『ブレイブ』 75点

2007-04-05 12:35:41 | (米国) 1980~99 

ブレイブ

1997年/アメリカ

J・デップ ファンには堪らない

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 75

ストーリー ★★★★☆75点

キャスト ★★★★☆80点

演出 ★★★★☆75点

ビジュアル ★★★★☆75点

音楽 ★★★★☆75点

ジョニー・デップ監督・主演のヒューマン・ドラマ。自らネイティブ・アメリカンの血を引く彼の初監督作品で脚本も兄と共同で手掛けた。
貧しさのあまり家族を守るため、謎の人物マッカーシー(マーロン・ブランド)から5万ドルと引き換えに、殺人シーンを撮影する「スナッフ・ムービー」の出演を引き受ける。
突飛なストーリーだが、J・デップが演ずると思わず引き込まれ、彼の必死さ・妻子を愛する気持ちが哀れを誘う。瀬戸際で神父に心の救いを求め否定され、老父とともに先祖から伝わる瞑想に耽ることでケジメをつけるところはちょっぴり消化不良な気もするが、J・デップ ファンには堪らない魅力満載の映画だ。


『善き人のためのソナタ』 90点

2007-04-01 07:00:57 | (欧州・アジア他) 2000~09

善き人のためのソナタ

2006年/ドイツ

心の豊かさとは?改めて考えさせられる

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shinakamさん

男性

総合★★★★☆ 90

ストーリー ★★★★☆90点

キャスト ★★★★☆85点

演出 ★★★★☆85点

ビジュアル ★★★★☆90点

音楽 ★★★★☆90点

フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクの監督・脚本で初の長編映画作品。アカデミー賞外国映画賞受賞など多数の賞を獲得した。東西冷戦下のDDR(東独)で、シュタージ(国家保安省)による反体制弾圧のための尋問・監視をリアルに描いている。
シュタージは約10万人、さらにIM(非公式協力者)が17万人もいて例え家族でも密告されたという。現に主演のウルリッヒ・ミューエ自身も妻の密告により監視された経験を持つとのこと。監督自身が幼児期に感じた、大人の態度に対する疑問をもとに企画され、4年間の綿密な事前取材が生きている。
シュタージのヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)と劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)を対比しながらドラマは静かに同時進行する。信じているDDRの体制社会にも、ゴマすりの同級生が上司であったり、大臣も決して私利私欲に無縁ではないところが描かれているが、彼はそれを不幸だとは感じていない点が何とも哀れに写る。
ドライマンと同棲している名女優クリスタ(マルチナ・ゲデック)も運命的な人生を送り、このドラマの核となっている。フィクションなのに心の奥にズシンと響いて胸を打たれる。
原題は「あちら側の人間の生活」だが、邦題は反体制の演出家イェルスカが自殺してドライマンに送った楽譜の題名。これを盗聴して涙するヴィースラーが象徴的であり、エンディングにも繋がっていて邦題の方がぴったりくる。そしてピアノ曲を作ったガブリエル・ヤレドの音楽が、プラハ交響楽団の演奏で全編に流れて秀逸だ。
ベルリンの壁崩壊後、郵便配達員として働くヴィースラーが何故か大きく見え、元大臣が粗野な人間に見えたのが印象的。ドイツ統一後の今、街並みの落書きの多さが格差社会を象徴していて何とも云えず悲しいが、少なくとも「人間の尊厳や心の豊かさ」は数段良い環境ではないだろうか?