晴れ、ときどき映画三昧

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「運び屋」(18・米)80点

2019-03-21 09:29:59 | 2016~(平成28~)


 ・ C・イーストウッド監督・主演による肩の力を抜いたサスペンス風人間ドラマ。


 「ニューヨーク・タイムス・マガジン」に掲載された記事をもとに、麻薬を運ぶ90歳の男を描いた人間ドラマ。「グラン・トリノ」(08)のニック・シェンク脚本で、監督・主演は10年ぶりのクリント・イーストウッド。共演は「アメリカン・スナイパー」(14)のブラッドリー・クーパー、オスカー女優ダイアン・ウィースト、「マトリック」シリーズのローレンス・フィッシュバーン、アンディ・ガルシア、マイケル・ペーニャなど。

 第二次大戦の退役軍人で、デイリリー栽培事業に失敗した90歳のアールは自宅を差し押さえられる。仕事一筋で家庭を顧みなかった彼は、家族とは疎遠になっていた。
 途方に暮れていたアールに無事故無違反という腕を買われて、車で荷物を届けるという仕事を持ち掛けられる。引き受けた仕事はメキシコ・カルテルの麻薬運びだった。

 シリアスなサスペンスを連想するが、88歳のC・イーストウッドが10年ぶりに監督・主演したのは自分の人生とオーバーラップするような哀切溢れる人間ドラマだ。
 父親への冷ややかな態度を取る娘のアイリスを演じたのは実の娘アリソン・イーストウッドなのも、自省を込めたお洒落なキャスティング。
 このアールという男は陽気で愛すべき不良老人で、老いを感じる後ろ姿とはウラハラに目的地のメキシコまでカーステレオから流れる音楽を口ずさみながら何度も往復する。最近免許を自主返納した筆者にとっては驚きだ。
気ままに寄り道しながらドライブを楽しむ風情は、黒人を<ニグロ>と呼んだり、女性ライダー集団に<ぼうや>と呼びかけたり時代錯誤を気にしない。

 稼いだ金で自宅や農園を取り戻し、退役軍人施設を復興したり孫娘の結婚式準備金を援助したり友人のバーを救済して、家族・友人との交流を復元できたかに思えたが、高い代償が待ち受けていた。さらに愛妻との別れは「時間はお金では買えない。」「最後に大切なものは買えない。」と悟って行く。

 メキシコとの国境の壁が国政を揺るがす社会問題となっている現代のアメリカへのメッセージは随所にあるものの、<家族との絆の大切さ>という普遍のテーマをイースウッドのスタイルで描いた116分だった。

 
 

 


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