・ M・ギブソンの念願だったOED編纂秘話を映画化。
サイモン・ウィンチェスターのベストセラーをメル・ギブソンが20年以上費やして映画化にこぎ着けた「オックスフォード英語大辞典(OED)」編纂秘話。
編纂主幹三代目ジェームズ・マレーに扮したM・ギブソン。その編纂に多大な貢献を果たしたウィリアム・チェスター・マイナーにショーン・ペンが初共演するというW主演が実現した。
二人とも実在の人物だがドラマは事実をもとにアレンジされている。
19世紀、大英帝国の威信を賭け着手した「オックスフォード英語大辞典(OED)」は20年で足踏み状態。周囲の異論を押し切り言語学者フレデリック(スティーヴン・クーガン)の後押しで編纂主幹となったのは、貧しさ故学士号を持たないスコットランド人・異端の言語学者ジェームズ・マレー(M・ギブソン)だった。
彼は広く一般市民から文例を集める方法を採用、精力的に取り組むがシェイクスピアの時代まで遡りすべての言葉を収録するという無謀なプロジェクトは行き詰まってしまう。
突破口を開いたのがマイナー(S・ペン)で沢山の文例を送ったのは精神病院からだった。
ドラマはマイナーが何故精神病院にいるのか?そもそも何者だったのか?など経緯を辞書編纂のエピソードとともにドラマチックに描写していく。
アルコールによるお騒がせ俳優という私生活のレッテルを貼られた名優同士の競演は、あまりにも特異な人生を歩んだマイナーを演じたS・ペンにスポットが当たるのは当然か?
辞書編纂のドラマを映画化した日本の「舟を編む」(13)では全編ほのぼのとしたムードがあった。
本作のエピソードは異端の言語学者と殺人を犯し精神を病んだ米国の元軍医との絆を描いているので、過剰なところを如何に柔らげるかがポイント。
その役を担ったのがマレーの妻エイダ(ジェニファー・イーリー)とマイナーに夫を殺された妻イライザ(ナタリー・ドーマー)。エイダは良妻だが、決して自身の意見を抑え夫に従うタイプではないように描かれていて理事会で夫を庇うシーンも。
イライザは、夫を殺したマイナーを憎みながら彼の贖罪を許し好意を抱くように。二人の仲介役を務めたマンシー(エディ・マーサン)が義理堅く優しさのある看守役で、彼の主演した「おみおくりの作法」(13)のような持ち味を発揮していた。
M・ギブソンは受けの演技で好演だったが、オックスフォードの撮影を増やし辞書編纂にまつわる重厚なドラマにしたかったのかもしれない。製作会社(ボルテージ・ピクチャー)と揉め法廷闘争の結果、監督・脚本を担当したファラド・サフィアを架空名義(P.B.シェムラン)にしている。
結果は見やすい展開となったが、国を揺るがすほどの真実に迫る深みのある歴史ドラマにはならなかったのがもったいない気も・・・。
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