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「ビリー・ザ・キッド/21歳の生涯」 特別版(05・米)75点

2018-07-07 16:06:02 | (米国) 2000~09 

・ アウトローの終焉を描いたS・ペキンパー最後の西部劇。



ジェシー・ジェイムズと並ぶ稀代のアウトロー、ビリー・ザ・キッドと彼を追う保安官パット・ギャレットの詩情溢れる男の挽歌。「ワイルドバンチ」(69)のサム・ペキンパー監督で73年劇場公開されたものを、彼の没後05年に特別版として再編集された。

20世紀初頭のニューメキシコ。土地売買のトラブルで背後から撃たれたパット・ギャレット。死の間際でビリー・ザ・キッドのことを思い出す。

公開当時なかった冒頭のシーンは、時代変化の寂寥感が全編に流れる鎮魂歌として欠かせないシークエンスで本作の再評価に繋がっている。

バイオレンスの巨匠S・ペキンパーにしては抑え気味ながら全編銃声が轟く銃撃シーンのオンパレードで、スロー・モーションは健在の本作。

原題<パット・ギャレットとビリー・ザ・キッド>のとおり、ビリーの生涯を描いたものではなく、ビリーを倒したパット・ギャレットを通してフロンティアの終焉を描いたもの。

主役のパット・ギャレットは無法者だった時代ビリーとはウマが合い弟のような存在だったが、落ち着くことを選んで保安官になった。渋い風貌で颯爽としていて権力者に雇われながらビリーへの友情は消えていない。ギャレットを演じたジェームズ・コバーンが完璧な演技。

ビリーに扮したのは人気カントリー・ミュージシャンのクリス・クリストファーソン。義侠心と愛嬌を兼ね備えたアウトロー役を好演しているが、如何せんかなり年上で躍動感がない。

二人の立場は好対照だが表裏一体の関係で、若いビリーへの羨望がギャレットにはあったが、時代はそれを許さない。

全編に流れるボブ・ディランの哀愁あるメロディが、殺伐な銃撃戦を浄化させてくれる。ディランはナイフ使いの流れ者エイリアス役で出演していて、今思うと貴重な映像。
老保安官ベイカー(スリム・ピケンズ)が腹を撃たれ川辺に佇み、ベイカー夫人(ケティ・フラド)が見守るシーンで流れる「天国への扉」が中盤での名シーン。

ビリーを射殺したギャレットは鏡に映った自分を銃撃した。
58歳で亡くなったパット・ギャレットを描いたS・ペキンパーは、11年後の59歳で亡くなった。ギャレットが感じた<最後のアウトローへの憧憬とフロンティア時代の終焉>はペキンパーの想いでもあった。




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