晴れ、ときどき映画三昧

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「ジェシー・ジェームズの暗殺」(07・米 )70点

2018-07-06 12:00:17 | (米国) 2000~09 

・ 伝説のアウトローと彼を暗殺した男の心理ドラマ。




ロン・ハンセンの原作「臆病者ロバート・フォードによるジェシー・ジェイムズの暗殺」をアンドリュー・ドミニクの監督・脚本で映画化。
伝説のアウトロー・ジェシーにブラッド・ピット、ロバート・通称ボブにケイシー・アフレックが扮し、ジェシーに憧れながら彼を裏切って暗殺し、臆病者と呼ばれたボブの視点で描いた心理ドラマ。

ジェシー・ジェームズは、西部開拓時代に銀行や列車を襲い25件以上の強盗・17件の殺人事件を起こした実在の人物。
南北戦争後の南部の荒くれ男とともに派手な犯罪を繰り返しながら、新聞や三文小説などに取り上げられ人気を博した無法者のリーダー。
その生立ち・風貌や金持ちから金を奪う行動で、苦しんでいる南部の人にとって義賊として全米に知られる存在になる。

映画化も数多くあって、同じミズリー州生まれのブラピにとっても演じてみたい人物だった。カリスマ性があり魅力的だが、英雄扱いされるようになり虚像に苛まれ疑心暗鬼になっていく様子を、キメ細かな演技で存在感を魅せている。(ヴェネチア映画祭で主演男優賞受賞)

最後の列車強盗を実行したあと兄フランク(サム・シェパード)とも袂を分かち強盗団を解散するが、そばにいることを許したボブにさえ心を許していなかった。コロコロ変わる態度と表情に、彼の心の揺れ具合が見て取れる。

ナレーション入りで最後の列車強盗シーンからボブを傍に置くキッカケ、かつての仲間から裏切られる恐怖で一人一人を訪ね旅するシーンが続く。このシークエンスが如何にも冗長的だが、哀愁漂う音楽とロジャー・ディーキンスのカメラワークが支えている。
R・ディーキンスは14回オスカーにノミネートされ、今年初受賞した伝説の撮影監督。どのシーンを観てもその映像に酔いしれてしまうほど。

もう一人の主役はボブ役のC・アフレック。本作で、ベンの弟と言われ続けていた彼が初めて注目された。ジェシーへの憧れから、恐怖心を隠しつつ虚栄心を持ち続け、暗殺者へと変化して行くさまを繊細に演じている。
「マンチェスター・バイ・ザ・シー」で10年後の今年、オスカー受賞(主演男優賞)で念願が叶った。

ガンベルトを外して壁の額縁の曲がりを直すため、背中を無防備にしたジェシーと、後ろから銃殺したボブのシーンがとても印象深い。

暗殺後からエンディングまでが20分以上あって、本作の主題が見えてくる。死後ジェシーは益々英雄となり、ボブは臆病者として世間からツマハジキになっていく。歴史のヒーローはこうして創られるのだ。



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