晴れ、ときどき映画三昧

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「シェーン」(53・米)85点

2018-04-11 15:29:44 | 外国映画 1946~59

・ 観るたびに新発見がある西部劇の傑作。


「陽のあたる場所」(51)で一度、本作ののち「ジャイアンツ」(56)で二度目のオスカーを獲得した巨匠・ジョージ・スタージェス監督による唯一の西部劇。ワイオミングの空気が伝わるような臨場感あるテクニカラーの美しい映像で、ロイヤル・グリグスが撮影賞を受賞している。

ヴィクター・ヤングのテーマ曲<遥かなる山の呼び声>とともに「シェーン、カムバック!!」のラストシーンで有名だ。まるで股旅もののようなスタンダードなストーリーだが、溢れ出る豊潤な香利を放つ傑作である。

グランドティートン山のふもとに住む開拓農民のスターレット一家。一人息子のジョーイ(ブランドン・デ・ワイルド)が見つめるなか、現れたのが流れ者のシェーン(アラン・ラッド)だった。

父親ジョー(ヴァン・へフリン)の勧めで開拓を手助けすることに。ジョーイと仲良くなるが、母・マリアン(ジーン・アーサー)は警戒気味で、「何れは出て行く人だからあまり好きになってはダメ」と息子に言う。まるで自戒を込めているような・・・。

そこへ牧畜業者のライカー(エミール・メイヤー)らがやってきて、自分の土地だから出て行けと言い争いとなるが堂々巡り。

南北戦争終了後、入植した農民がその土地で5年間耕作すると無償で土地が得られる<ホームステッド法>を政府が制定したことが背景にあり、同類の争いがあちこちに頻発していた。

ライカーは名うてのガンマンであるジャック・ウィルソン(ジャック・パランス)を雇い、手始めに農民仲間のトーリー(エリシャ・クックJr)を挑発し銃殺、ジョーを誘き出そうと画策する。

シェーンはジョーを諫め、ライカーたちが待ち構える酒場へ単身で向かう・・・。

少年ジョーイの視点で描かれた切り口は当時新鮮で、早撃ちのガンマン・シェーンは<憧れ>、父ジョーは頼りになり、母マリアンは愛情溢れる優しい存在として描かれる。

スティーブンス監督は控えめな描写ながら、ちょっとした表情や行動からシェーンがマリアンへの仄かな愛情を持っていること、マリアンは母親であり善き妻であることを意識しながらもシェーンへの淡い慕情が伝わってくる大人の視線をおろそかにしていない。それを察したジョーの漢らしさまでひしひしと感じ、とても痛々しい。

マリアンは銃を否定するが、男たちは殴り合いの果て最後は銃で決着をつけ、スターレッド家が土地とともに残されて行く。

西部劇にホーム・ドラマを持ち込み、さらにアメリカンドリームの原型であるホームステッド法が要因で争いは銃では解決しないことを示唆しながらも、最後で西部劇の醍醐味を堪能させてくれる。

シェーンを演じたA・ラッドはこの作品だけで早撃ちガンマンとして永くファンにその名を留め、ジャック・ウィルソンを演じたJ・パランスはその存在感でその後のガンマン・スタイルを確立した。

デジタル・マスター版で蘇った本作は、見るたびに新発見がある。これこそ名作である所以だ。



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