・ M・カーティス監督との確執を乗り越えたJ・クロフォードの起死回生会心作。
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の作家ジェームズ・M・ケインの原作を「カサブランカ」のマイケル・カーティスが監督し、ジョーン・クロフォードがオスカー(主演女優賞)を獲得した。
いきなり男が「ミルドレッド・・・」と呟き倒れる殺人事件のプロローグ。ミルドレッドとは彼の妻でコート姿で橋にたたずみ警官に注意される。
サスペンスタッチで始まり主人公が警察で語る身の上話は、平凡な主婦からレストラン経営者として成功するが、自らの愛情過多が要因でわがままな娘ヴィータとの確執に悩む4年間だった。
原作は、世界恐慌や禁酒法で揺れる時代背景でヒロインの愛と確執の9年間を描いたドラマだが、本作は殺人事件から起こるミステリーに脚色され最後までドラマを引っ張って行く構成。
ヒロインを演じたJ・クロフォードは、クラーク・ゲーブルとの共演メロドラマなどで人気があったが、年齢とともに落ち目の頃で、本作に自ら名乗りを上げ起死回生の会心作となった。
ウェイトレスからレストラン経営者として立身出世し波乱の人生を歩む女性像は、踊り子からファムファタール女優となった彼女自身の人生に重なる部分もあってスラリとした容姿とともにヒロイン像にピッタリ。
モノクロならではのソフトフォーカスのアップが、太い眉と大きな眼・えらの張った顎など意志の強さを表し、いかり肩のスーツやミンクのコートが良く似合う。
他方で娘のためには自分の愛情を犠牲にしてしまい、おまけに娘に疎まれ裏切られる人生を歩む哀れな女性でもあった。
ハリウッド・スタイルのエンディングは救いとなったが、ミステリーとしては多少強引さもあってか敗戦後の日本では劇場未公開になってしまった。昨今はDVDも発売されていて本作を観られるのは嬉しい限り。
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