晴れ、ときどき映画三昧

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「ドクトル・ジバゴ」(65・米/伊 )85点

2018-04-13 16:12:41 | 外国映画 1960~79

・D・リーン監督による ロシア革命を背景に壮大なスケールの大河ロマン。




19世紀末、ロシア革命を背景に医者で詩人でもあるジバゴの二人の女性、ラーラとトーニャとの数奇な愛の生涯を描いたヒューマン・ドラマ。ボリス・パステルナークの自伝的小説を「アラビアのロレンス」(62)のデヴィッド・リーン監督ロバート・ボルト脚色によって映画化し、脚色賞などオスカー5部門獲得作品。

製作したカルロ・ポンティは大女優ソフィア・ローレンの夫。彼女をヒロインにしようと権利を取得し、MGMがD・リーン監督を条件に映画化は成立したが、ラーラ役はイメージが合わないと拒否されジュリー・クリスティ起用となっている。

ジバゴを演じたのは「アラビアのロレンス」のエジプト俳優オマー・シャリフ。メイキャップと鬘でロシアのインテリらしく変貌を遂げ、一世一代の演技を魅せた。

原作は運命に翻弄されたジバゴの生涯を描いた長編文芸作品で、映画化には相当脚本の力量が問われる。R・ボルトは見事に成し遂げたが、それでもインターミッションが入り200分弱の作品となった。

医学生・ジバゴは恩人の娘トーニャ(ジェラルリン・チャップリン)と婚約、出版した詩の評判も上々で順風満帆の暮らし。
仕立て屋の娘・ラーラは17歳で母の愛人である弁護士のコマロフスキー(ロッド・スタイガー)に犯され、ジバゴとトーニャの婚約パーティの席で発砲事件を起こす。

そんな二人が軍医と看護師で再会、ラーラの夫・パーシャ(トム・コートネイ)は行方知れず。帝政と革命軍の内戦を経て時代に翻弄されながら逢瀬と別離が繰り広げられる。

舞台は革命で混迷するロシアが舞台でその広大な土地で繰り広げられる人間模様は時空を踏まえた映像作りが成否を問われそう。

手抜きは一切しないD・リーン監督らしく、時代の変遷・季節の移り変わりやその風景まで一切妥協を許さない映像は、まさに映画ならではの醍醐味。

スペイン・マドリード郊外に膨大なエキストラを使い、建築物や街並み・列車で帝政時代のモスクワさらに冬のシベリア平原を、壮大なスケールで見事に再現している。

なかでもカラーコーディネイトは実に徹底されていて、モノトーンのモスクワに赤い旗と血の色が強烈に残る配色だったり、ラーラは赤のドレス、トーニャはピンクの衣装で二人の役柄をイメージ。

さらにモーリス・ジャールの挿入曲<ラーラのテーマ>が流れる印象的なシーンでは、ひまわりなどの黄色で心情を表現するなど、緻密な演出には感心するばかり。

<ラーラのテーマ>はバラライカで演奏されるが、この民族楽器はジバゴの母が大事にしていてラスト・シーンでこのドラマを象徴するような登場がある。
ちょうど第三の男のチターのように名画には欠かせない音楽として今に伝わっている。

時代の流れに乗って巧みに生き抜いたコマロフスキー、革命に命を懸けのちに偏狂的となり自ら命を絶ったパーシャなどラーラに関わる男たちのドラマでもある。

革命軍のリーダーで義兄のエフグラフ(アレック・ギネス)が、過去に遡って殻られる形式のジバゴの生涯は<党には受け入れられなかったが詩を愛する人は忘れない。>とダムで働く娘に伝えることで終焉を迎える。ダムの上にかかる虹が未来の希望を託すように・・・。

家族を人質にされノーベル賞を辞退したパステルナークの小説は、この映画で見事に花開いたのだ。








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