・ A・ワイダ監督の人間愛と祖国愛がほとばしる。
イエジー・ステファン・スタウィニュスキーの原作・脚本を当時31歳だった若手監督アンジェイ・ワイダが映画化。彼の<抵抗3部作>の2作目でカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞した。
’44年9月ワルシャワ蜂起のパルチザン部隊中隊長ザドラ(ヴィンチェスワク・グリンスキー)は独軍に全滅の危機に曝され、中央区まで撤退命令を受ける。43名いた隊員も20名に減り、マンホールから下水道を伝って脱出を図ろうとする。悲劇の隊員たちは軍人より一般市民が多く、暗くて異臭が漂う地下道を一緒に行動するのは無理なハナシ。発狂したり単独行動で地上に上がり独軍に射殺されたりする。
小隊長コラブ(タデウシュ・ヤンチャル)はデイジー(テレサ・イゼウスカ)に助けられながら、光が見える出口らしきところへ到達するが・・・。
製作した’57年のポーランドは旧ソ連の検閲なくしては映画が作れなかった時期。この映画はポーランド人が見ればソ連が進軍せず、対岸でパルチザン部隊の崩壊を待っていたのが分かるという。それが光の先のヴィスワ河の対岸だった。
<ワルシャワの悲劇>を題材にした映画は近年では「戦場のピアニスト」があるが、ソ連軍はほとんど描かれていない。
「悲劇の主人公が揃った。彼らの人生の最後をお目に掛けよう」というナレーションで始まる救いのないドラマだが、A・ワイダの人間愛と祖国愛がほとばしるのを感じる。