晴れ、ときどき映画三昧

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「山桜」(08・日) 75点

2014-02-12 17:53:21 | 日本映画 2000~09(平成12~21)
 

 ・ 藤沢周平作品の行間を映像化する難しさを感じた。

 藤沢周平の短編集「時雨みち」の一編「山桜」を「初恋」の篠原哲雄監督が手掛けた初の時代劇。

 江戸後期、庄内海坂藩に暮らす野江(田中麗奈)。叔母の墓参りの帰り、ふと目に目に留まった山桜。一枝撮ってくれた武士は手塚弥一郎(東山紀之)というかつて縁談を断った相手だった。

 夫に先立たれ再婚したものの、居場所が見つからない野江の心に光が射してきたのを感じる。藤沢作品にしては珍しく女の視点で描かれた純愛物語だ。

 原作の雰囲気を映像化するのに苦心の跡が見られ、その行間を表現する難しさが窺える。庄内の四季の移ろいを丁寧に映しているが、究極の美しさとは言い難い。おそらく厖大な製作費がないと無理なのだろうが、この手の作品には致命傷に成りかねない。

 主演の田中麗奈は頑張っているが、所作に欠点が見えたのはモッタイナイ。それに引き換え東山紀之はイメージにぴったりで殺陣も美しくまるで絵に描いたよう。

 壇ふみ、冨司純子のベテランがこの時代の女を彷彿させてくれるが、出演者の言葉遣いが現代風なのが気になったのと、主題歌(一青窈・栞)は劇中よりエンディングが相応しいのでは?