晴れ、ときどき映画三昧

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「氷点」(66・日) 80点

2013-07-20 07:53:24 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)
 ・無駄のない展開を楽しめる97分の人間ドラマ。



 三浦綾子の原作で、新聞連載終了直後TVドラマ化されて話題となった。ほぼ同時に水木洋子脚本・山本薩夫監督・若尾文子主演で映画化された。

 北海道を舞台に繰り広げられる医師家族の葛藤の物語で、モノクロ画面の雪景色がドラマを盛り上げる。原作はキリスト教でいう「原罪」がテーマだが、人間ドラマとして無駄のない展開を楽しめる97分。これだけコンパクトに纏めながら、しっかり起承転結があるのは水木洋子の手腕によるものだろう。社会派山本薩夫の職人振りも手堅い。

 主演の若尾文子はこのとき32歳。良家育ちの明るく働き者の奥様が、娘を失い悲しみ、代わりに養女を溺愛し、そして憎しみに変わる複雑な役を見事にこなしている。何よりしっとりとした美しさがある。
 夫の船越英二は町の名士で人格者を自負しながら、心の奥で妻の浮気を疑う。殆ど素の演技と思えるほどのさりげなさが上手い。
 ヒロイン安田(現・大楠)道代は、可愛いが健気さに欠けるきらいがあり残念だった。

 脇では兄の山本圭がイメージどおりのハマり役だった。さらに森光子のシャキシャキした演技が光っていて、津川雅彦の美男振りも今観るとお宝ものである。

 その後、日本および韓国・台湾で幾度となくリメイクされているが、この映画を超えるものは見当たらない。