・ロマンチック・コメディでもあり舞台劇でもある傑作サスペンス。
コーネル・ウールリッチの原作をもとに、ジョン・マイケル・ヘイズに大胆な脚色をさせたヒッチコックのサスペンス。何度観ても面白い。
NYのダウンタウン、グリニッチ・ビレッジのアパートで、足を骨折したカメラマンが慰めとして窓越しに覗いた住人たち。作曲に悩む音楽家。テラスで寝る老夫婦。ミス・トルソという仇名の踊り子の卵。耳の遠い彫刻家。新婚カップル。ミス・ロンリーという仇名のオールド・ミス。なかでも興味を惹かれたのは、病床の妻と夫の大男。
カメラがあたかも覗き見するジェフ(ジェームズ・スチュワート)の目線で、音声だけのパントマイムによって鮮やかに情景が伝わってくる。台詞なしで表現するヒッチコックの掴みの巧さに感心させられる。
ジェフの恋人に扮したクール・ビューティ、グレース・ケリーが何とも素敵で美しい。良家のお嬢さまで溌剌としていて、一途な思い遣りのある理想の女性像である。ジェフが羨ましい限り。
サポートするのがコメディ・リリーフとなる看護師ステラ(セルマ・リッター)で、子のトリオがサスペンスをバランスよく盛り上げている。
サスペンスなのに、ジェフとリザのロマンティック・コメディでもあり、アパートの住人たちの舞台劇でもあり、ジェフとソーウォルド(レイモンド・バー)のアクションもついてくる盛り沢山な112分だった。