晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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「華麗なる一族」(74・日) 80点

2013-07-11 08:09:36 | 日本映画 1960~79(昭和35~54)

 ・今日のメガバンク時代を予見した経済ドラマ。


  

 山崎豊子の経済小説を「戦争と人間 完結編」のコンビ、山田信夫・脚本、山本薩夫・監督で今日のメガバンク時代を予見した作品。
 フィクションとあるが、戦後最大の倒産と言われた山陽特殊鋼と神戸銀行の岡崎一族がモデルであることは一目瞭然。原作の雰囲気を壊さずに映画化するのはかなり難しいのに、無難にこなした山田・山本コンビ。

 のちに何度もTVドラマ化されているが、長男・鉄平と父・大介の葛藤が中心になっているのに対し、映画では万表一族のひとりひとりの心の内や高度成長期での企業戦士たちの葛藤もしっかりと描かれている。

 時代を経て観ると陳腐に感じる「妾妻同禽」が黙認されている万表家。大介を演じた佐分信ならではの貫録。長男の鉄平には仲代達矢が扮し颯爽としていて、のちの加山雄三やキムタクに見劣りしない熱血漢ぶり。仲代はまさに映画スターで、TVだとはみ出してしまいそう。
 秘書兼愛人役の京マチ子、大同製鋼社長・二谷英明など多士済々で当時の層の厚さには驚かされる。
 大蔵官僚で万表家・娘婿の田宮二郎の気位の高い演技も目立っていたが、のちに演技での猟銃自殺を実際に真似たのは衝撃的だった。
 何といっても政経癒着の象徴・永田大蔵大臣役の小沢栄太郎なくしては始まらない。

 戦後の経済界を揺るがした事件も、昨今の政治経済の大変動にはスケールが及ばないが、日本の経済史には欠くことのできない事件を映画化したことは、40年前は斜陽化したとはいえ映画産業がまだ元気だった証だろう。